大阪市生野区には、在日韓国・朝鮮人の集住地域があり、鶴橋には日本最大のコリアタウンがあります。近年はベトナムなど「ニューカマー」と呼ばれる人びとも急増しており、区民の5人に1人が外国籍住民、その比率は全国の都市部で最も高く(21%)、66か国の国・地域の人びとが暮らしています。経済的に困難を抱える家庭が多く、就学援助率は全国の2倍以上です。外国にルーツのある子どもなど多様な文化的背景を持つ家族の教育・生活面の安定化に向けたしくみづくりが早急に求められています。
こうした課題――多文化共生をまちづくりの軸にすえた総合的・多面的支援拠点の構築――に取り組むために、2019年6月、生野区において、市民主導のプラットフォームが発足しました(IKUNO・多文化ふらっと)。SDGs「誰一人取り残さない」をミッションに掲げ、NPOや市民、行政、企業、大学等、多様なアクターが協働し、多文化共生のまちづくりに向けた「拠点づくり」「多文化イベント」「調査・提言」という3つのプロジェクトが取り組まれています。「拠点づくり」プロジェクトでは、 小学校跡地活用計画(案)が策定されたのを受け、市民主体の多文化共生センターを設立しようと準備が進めらています。
本プロジェクトは、生野で進められている多文化共生のまちづくりに向けた「拠点づくり」に、地域と大学が連携して取り組んでいこうとするものです。たとえば、学びの協働プロジェクトやプログラム開発、コミュニティづくり、教育コンソーシアムの発足など、学びのデザイン化を進めていきます。
共生とは、つねにすでに、わたしたちによって生きられてきた時間と身体そのものです。生野というさまざまなかたちで共生が育まれてきた歴史と風土こそ、ひとりひとりことなる背景が描かれてゆく地平として学びのキャンパスが真に根を張る土壌となるでしょう。合理化や競争のなかでひとびとが分断される時代において、本来あるべき教育のすがたを、未来ではなくいまを生きる子どもたちとともに、この地でとりもどす。そのために、わたしたちにのしかかる力をほどき、〈ちがい〉を意識化することで縒(よ)りあわされる〈つながり〉の糸でわたしたちの知を編み直すための、さまざまなジャンルを横断する対話と創造活動を繰り広げます。
研究協力者
(学内)
ほんまなほ COデザインセンター 教授
榎井縁 人間科学研究科付属未来共創センター 特任教授
高橋綾 人文学研究科 講師
今井貴代子 社会ソリューションイニシアティブ 特任助教
(学外)
宋悟(NPO法人IKUNO・多文化ふらっと事務局長・NPO法人クロスベイス代表理事)
高谷幸 東京大学大学院人文社会系研究科 准教授
佐伯康考 静岡文化芸術大学文化政策学部 准教授
金和永(NPO法人クロスベイス事務局長)
小泉朝未(大阪市立大学都市研究プラザ特別研究員・一般社団法人HAPS)
栗田拓(NPO法人トイボックス代表理事)
郭辰雄(NPO法人 コリアNGOセンター代表理事)
朴基浩(映像クリエーター)
- 研究キーワード
- 多文化共生、多世代交流、まちづくり、地域課題、拠点、大学と地域の連携モデル、対話、学び、協働
- 社会課題
- 多文化共生、多世代交流、まちづくり、大学と地域の連携