学生のつどい

第5回SSI学生のつどい開催報告
「阪大SDGs学のススメ。」ワークショップ

<日時>  2021年2月15日(月)13:00〜15:00
<場所>  オンライン開催
<参加者> 30名
<プログラム>
・堂目卓生SSI長の挨拶
・参加者の自己紹介
・伊藤武志SSI教授による話題提供
 「社会の未来をみんなで共に創らなきゃ〜サステイナビリティ、SDGs、事業の役割」
・対話
  第1セッション <貧困> <教育> <ジェンダー>
  第2セッション <環境> <企業・経済> <平和・国際>
・参加した感想・振り返り

テーマにもとづく対話セッション

2月15日(月)、第3回「阪大SDGs学のススメ。」がオンラインで開催され、今回も多様な学部・研究科から学部生・院生20人の参加があり、堂目卓生SSI長など関係者を含めて、総勢30人が集まりました。
伊藤武志SSI教授の話題提供を受けて、参加者それぞれのSDGsへの思いや関心を共有する対話セッションを行いました。事前アンケートで参加者のSDGsへの関心を聞き、事前に6つのテーマを設定しました(<貧困> <教育> <ジェンダー> <環境・エネルギー> <企業・経済> <平和・国際>)。会議システムZOOMのブレイクアウトセッションに分かれて、テーマにもとづく対話を2回行い、どのような議論があったかを全体で共有しました。
以下、開催報告です。

話題提供者のお話

伊藤教授からは、「社会の未来をみんなで共に創らなきゃ〜サステイナビリティ、SDGs、事業の役割」というタイトルで話題提供していただきました。まず、サステイナビリティに関連するこれまでの出来事を、企業・事業の役割にそって振り返り、営々とした努力が先人によって行われてきたことをみんなで確認しました。またSDGsの「宣言」にある「目指すべき世界像」にも触れられ、学生に向けて、ぜひ読んだ上でありたい未来の姿をイメージしてほしい、達成に向けて一緒に行動していきたい、と語られました。伊藤教授の専門である経営管理の観点から、企業の話もしていただきました。企業は社会と顧客にとって必要なものをつくり、それが経済的利益を生むことで社会に分配され、さらに社会価値が生み出されていきます。世の中全体で見れば、みんなでつくった価値が、世の中全体を支えているといえ、そうしたCSV(creating shared value:共通価値の創造)が公器としての企業の役割だと述べられました。そして、みんなで助け合って全員で生き残る世の中にすること、つまり誰一人取り残さないことが何より大事であり、それを忘れないように今後の仕事や研究に取り組んでいってほしいと、対話セッションの導入にふさわしいメッセージが送られました。

この後、テーマに分かれてセッションが行われました。

テーマセッション:<貧困>

<貧困>のテーマセッションでは、参加者がそれぞれの関心を話す中で、絶対的貧困と相対的貧困の2つに分けて貧困をとらえてはどうか、また国内の相対的貧困と世界の絶対的貧困という切り口で考えてみてはどうかといった意見が出ました。ホームレスやひとり親家庭などの相対的貧困については、使える福祉制度やサポートについての情報が必要な人にこそ行き届かないという問題や、制度を利用することを恥ずかしいと思ってしまう価値観や社会風土の問題が出されました。また世界の絶対的貧困については、グローバリゼーションが進む世界システムの中では、私たちの経済や消費ともつながってくる話です。話題は、生態系を守る取り組みやフェアトレードにも広がりました。

テーマセッション:<教育>

<教育>のテーマセッションでは、理系の参加者から、エネルギー問題を解決するために文系の仲間が欲しいと思っているが、専門分化することで壁が出きてしまうという話があり、文理の壁やその壁を壊す教育のあり方について話が盛り上がりました。文系の参加者から、知識の差で壁はあっても、異分野に対する知的好奇心については壁はないはずだという意見が出たり、大学の一般教養科目の期間を4年間に伸ばしてはどうか、文理が一緒にチームになって取り組む教育があってもいいのでは、といったアイデアが出ました。また、大学で他の分野について自ら学ぼうとする意欲を、小中学校時代からどのように身につけていけるかといった問いも出ました。文理の壁を曖昧にすることで、専門家だけでなく誰でも議論や取り組みに参加でき、SDGsの誰一人取り残さないという目標にもつながる、という意見も出ました。

テーマセッション:<ジェンダー>

<ジェンダー>のテーマセッションでは、ジェンダーギャップ指数が日本は121位と世界的に見て低く、男女の平等がとても重要な課題であることは参加者みんなで共有しながらも、さまざまな意見や考えが出されました。性別に限らず個人として尊重され評価されることが大事ではないかといった意見がある一方で、制度的に差別や格差がある状況で問題を個人差に帰することは危険で、マイノリティの声をもとにした制度化や意思決定の場への参加が重要ではないかといった意見もありました。また、ジェンダーだけでなく、セクシュアリティについても取り上げるべきで、LGBTQを含めた議論が必要ではないかと話が展開すると、その際にもLGBTQの人たちの可視化が他人事に終わらず、「自分の当たり前は当たり前ではない」と気づくことこそ大事ではないかといった意見も出ました。

テーマセッション:<環境・エネルギー>

<環境・エネルギー>のテーマセッションでは、参加者それぞれの関心は、環境問題、エネルギー問題、プラスチック問題、食品ロス、ビーガン(完全菜食主義者)、若者の関心の低さなど、多岐に渡りましたが、環境問題に対してどのようなアプローチが可能かといった話に展開していきました。まず、環境によい商品は値段が高く、善意だけでは取り組めないといった意見が出ると、科学技術的な方法による解決が現実的ではあるが、人々の意識や価値観の変化によっても少しは変わるのではないかという意見が出たり、若者の意識を高める必要はあるが、意思決定の場にいる上の世代の人たちへ働きかけた方が早いのではないかといった意見も出ました。こうした意識変革アプローチだけでなく、たとえば環境税を企業に課すなど制度変革アプローチのアイデアも出されました。

テーマセッション:<企業・経済>

<企業・経済>のテーマセッションでは、企業がSDGsにどのように向き合うか、そもそも経済成長は必要か、SDGsによって世界は本当に幸せになるのかといった、SDGsに対するさまざまな疑問から対話が出発しました。ヨーロッパ諸国中心にSDGsが提唱されてきましたが、発展途上国からみた場合にそのルールづくりや価値観に違和があるのではないかといった意見や、しかしやはり、世界全体にかかわる問題であるため、パートナーシップは重要であり、産業の方向転換を目指す上で企業の責任は大きいのではないかといった意見がありました。さらに、SDGsの達成度がヨーロッパ諸国で高いことに対して、正当な評価や公平な観察者の難しさを指摘する声もありました。

テーマセッション:<平和・国際>

<平和・国際>のテーマセッションでは、参加者それぞれの平和や戦争についての捉え方を共有することからスタートしました。米中対立、日韓問題、宗教の違いによる対立、水資源をめぐる紛争の可能性から水循環・資源循環などにも話題が及びました。対立の原因の一つに交流の少なさがあるのではないかという意見が出て、SNSの広がりとは逆に、意見や価値観の違う人同士のリアルな交流とそれを受け入れる土壌が少なくなっていることが話題にのぼりました。また、世界規模の民族対立は、国民国家の形成や植民地化を進めた近代化の流れと関連していて、解決の道のりは難しいけれど、歴史を知ることで国際問題への向き合い方や人々の認識が変わることが大切ではないかという話にもなりました。そして、異なる歴史観をもつ者同士が、見方を多角化し、異なる視点を取り入れるような教育や双方のコミュニケーションが重要ではないかと対話が進められました。

ワークショップを終えて

第3回目の学生のつどいは、参加者同士で関心や思いを共有する時間をたくさん設けたいと思いワークショップという形で開催しました。テーマと時間だけを設定し、進行や中身については学生のみなさんにお任せしたところ、どのセッションも相手を尊重する協力的な姿勢で進められていて、それぞれの経験や知識、思いが重ねられていくすばらしい対話でした。まだまだ時間が足りなかったのか、ワークショップ終了後も参加者の半数程度が残って話し合いの続きをしていました。以下の参加者アンケートにもあるように、SDGsに関心をもつ学生が出会い、対話をすること自体が大きな学びになっているようです。そうした学び続けるプロセスの中で、同じような関心をもつ仲間を見つけることができる、そのような兆しを感じることのできた回でした。参加者のみなさん、ありがとうございました。

参加者の感想(アンケートより)

・「シンプルに楽しかったです!同じようなことに関心をもっている方とお話できる機会はなかなかないので本当に参加できてよかったです。」

・「こんなにSDGsに関心のある人がいるのがわかってうれしかったです。」

・「SDGsの目標には相互関係があると理解できました。また、このつどいを通して、同じトピックに興味がある学生に出会えてよかったです。」

・「バックグラウンドが異なる人、一人一人が普段考えていることを共有して考えを深めていくことが非常に刺激的でした。自分と異なる価値観をもつ人に対する違和感も含めて一種の異文化交流ができました。」

・「様々な観点から、ものごとを『見る』ことをでき、新しい考え・興味をもつことができてよかったです。」

・「新たな気づきやイノベーションがおきそうな雰囲気が漂っていて興奮しました。」

(これまでの話題提供者のプレゼンテーションの動画は、こちらからご覧になれます)

(今井貴代子 社会ソリューションイニシアティブ特任助教)