学生のつどい

SSI学生のつどい活動報告
「阪大SDGs学のススメ。」フォローアップ

フォローアップを開催

第5回SSI学生のつどいのワークショップが大変盛り上がったのを受け、そのフォローアップが2021年3月18日(木)14:00〜16:00、オンラインで開催されました。参加者は、工学部、外国語学部、経済学部、法学研究科、国際公共政策研究科、文学研究科の学部・院生10人で、SSI関係者を含めて、合計15名が集まりました。
前回は、テーマにもとづきSDGsの関心を話し合うセッションを行いましたが、今回は、参加者一人一人の思いやアイデアをみんなで共有しました。伊藤武士SSI教授のファシリテーションのもと、アットホームな雰囲気で行われました。

プログラム
・参加者の自己紹介
・対話:みんなのSDGsの関心を共有
・参加した感想・振り返り

WHAT&WHYをみんなで共有し広げよう

まずは、伊藤教授から、フォローアップの目的や流れをWHATとWHYという言葉で説明していただきました。WHATは「どんなことを実現したいと思うか、どんなことが実現したらいいか」、WHYは「なぜ実現したいのか(個人的な理由でもみんなのためでも)」です。WHATとWHYで自分の考えを話し、それに対して、聞いた人たちがさらに聞きたいことを質問したり、感想やコメントなどを伝えます。大事なのは、その人の思いが実現したことをイメージしてコメントをすることだと伊藤教授は話されました。また、「どうやって実現するか」というHOWの部分については、実現したということを前提にして、「どうやって実現したのか」を想像してみます。そうすると、気持ちも軽くなり、柔軟で創造的なアイデアが生まれるのだそうです。今回は特にWHATとWHYにフォーカスしました。

対話:みんなのSDGsの関心を共有

関心や思いを話してくださった6人の方のテーマとその概要について、簡単に紹介します。

 

●パロトーンを使った万博でのイベント
パロトーン(parotone)という新型電子機器を使って、2025年の万博で、世界中の人と一緒に音楽を通してつながるイベントをしたい。その背景には、人種差別、経済格差、教育機会の不均等などの社会問題がある中で、一人一人の命が大切にされていないという現状がある。その解決に向けてunityを生み出し、言語や人種の壁を超えて音楽を通してつながるということが大切だと思っている。大阪大学の学生発ベンチャー企業でパロトーンをつくり活動をしている(a-tune)。海外の学生と一緒に演奏したいと考えているが、具体的な内容についてはこれからの段階。

 

●温暖化対策と海洋プラスチック対策
環境問題に対して意識が低い人でも、お金や時間をかけず、日常的にできる温暖化対策と海洋プラスティック対策について考えたい。環境問題について多くの人はふだんあまり考えずに生活している。そういう人に「そのやり方なら簡単だから協力できるよ」と言ってもらえることが大事なのではないか。たとえば、「10分歩いて、二酸化炭素排出量を減らそうキャンペーン」のSNS発信や、外で放置されゴミとなっているカップラーメンの容器を多く見かけるが、容器を紙製品に切り替えるアイデアなど。

 

●異なる性への理解
出生時に割り当てられた性別とは違う性への理解がまだまだ十分ではないと思っている。たとえば、明石市では、コロナ禍で生理用品が買えない生活困窮者に生理用ナプキンの無料配布が始まった。また、低容量ピルがオンラインで入手できるサービスも始まっている。ただし、オンライン診療は保険がきかず医療費が高い。こうした異なる性の抱えている悩み、置かれた状況や課題について知る機会が、学校教育にも家庭の中にもなかった。性別による悩みがあることをまずは知り、それがなくなるようにするにはどうしたらいいか。

 

●若者の「投票しない」問題 
若者の政治への無関心や投票率の低さが問題視されている。政治はどこか高尚なもの、専門家や為政者だけが議論するものだと思われているのではないか。誰もがフラットに普通のこととして政治について話せるような社会にしたい。たとえば、高校の社会科の中に新設された「公共」の科目のように、普通に政治とは何かを話せるようになってほしい。また、ちょっとした遊び感覚、ちょっとした酒飲み場のように、サロン感覚で政治について話すような場があるとよい。

 

●カーボンニュートラルの実現
工学部に属するので、科学技術を使ったカーボンニュートラルの実現に向けて、実際に携わっていきたいと思っている。技術を開発するのは技術者だが、社会実装における課題に技術者だけで対応するのは無理があり、法律、心理、文化、言語などさまざまな、特に文系分野の人々と共創していく必要がある。人文社会科学系からみた理工系のイメージや要望などについて聞いてみたい。

 

●ミャンマーにおける人権侵害の現状をSNSで発信
学生メンバーで、ミャンマー国軍の軍事クーデターのよる人権侵害の現状や、市民の不服従運動の状況をSNSで発信している。きっかけは、ボランティアでミャンマーに行ったことがあり、現地のリアルな声が自分には届く一方で、日本社会や周囲の関心が低いことを残念に思っている。ミャンマーの状況を信頼できるソースの記事から入手して1週間の出来事としてSNSに投稿している。なぜこのようなことが起きたのか歴史的な経緯がわかる動画も作成している。ポジティブな面も伝えたくて観光名所も紹介している。さらに広く知ってもらうためにどうしたらいいかアイデアがほしい。

フォローアップを終えて

今回のフォローアップでは、じっくり時間をかけて一人一人の関心を聞くことができ、参加者それぞれに関心の広がりや新しい気づきを得る時間となったようです。また、興味をもった理由や背景――WHYについても話していただいたので、関心や課題が生まれるリアルさ、切実さ、臨場感なども伝わってきました。さらに、「〜さん」の関心が、「〜さん」だけのものでなく、参加者それぞれにとっても大切な関心となっていくような、対話の重なりと響き合いが感じられました。
時間の関係上、10人の参加者のうち今回は6人までの発表と共有になりましたが、4月からもひきつづきこのような場をつくっていきたいと思います。参加者のみなさん、本当にありがとうございました!
今回、4人の参加者の方が、学生のつどいの感想を書いてくださいました。どうぞお読みください。

参加者の感想

純粋に「楽しかった」というのが第一印象です
法学研究科M2 塚原陽さん

今回のつどいでは、環境問題や若者の政治参加、ジェンダー、ミャンマーの政情不安など、多様なアクターが関わり、解決には文理問わず多様な知見や捉え方が求められる問題が提起されました。それに対し、現実性を一旦無視し、「理想の状態から逆算」するアプローチで自分なりの方策のアイデアを出し合っていきました。
元々、自分は知的好奇心が旺盛な方であり、自分の専門分野以外の知見に対しても興味・関心をもっていました。しかし、ただ知見を習得するだけでなく、「語り合う」「響き合う」ような体験はなかなか得られなかったと振り返っています。特に大学院生になると、どうしても専門分野に固執して他分野との接点が持ちにくいと思われます。
このつどいでは、普段の自分の思考パターンやフレームをいい意味で壊してくれる刺激的な時間を過ごせました。この場は、更なる研究の発展やイノベーション、アクションのきっかけになるかもしれないと今後もワクワクしています。
私はこの学生のつどいを、古代ギリシャで市民たちが語り合っていた「アゴラ」、もしくは近代フランスで啓蒙思想や市民革命が芽生えるきっかけにもなった「サロン」のような場所にしていければと考えております。

 

「阪大SDGs学のススメ」に参加して 
外国語学部2年 西村健さん
私は、この「阪大SDGs学のススメ。」に参加して、大きく3つ学んだこと、成長したことがあります。
まず、一つ目に議論の場に参加することで、自分の意見、考えを聞き手に分かりやすく伝えることが容易にできるようになったことです。また、それと同時に、進んで意見を発表する積極性も鍛えることができました。
二つ目には、普段自分が聞き慣れない話題についても興味深い意見を聞くことができたことです。私は、環境や貧困についての知識、興味はあるのですが、政治や教育に至ってはこの学生のつどいに参加するまで全くもって議論したことはありませんでした。しかし、実際に議論をすると意外に興味深いのではと感じました。ただそれは興味を持っていなかったのではなく、触れる機会があまりに少なかっただけであったからだと思います。そのことに気づいてから、意識的に新聞の政治セクションに目を通してみたり、私自身外国語学部所属であることから日本の英語教育のサイトを閲覧したりと、良い意味で勉強の幅が少しずつ変わってきました。
そして三つ目に今回の学生のつどいを含めて2回目の参加になるのですが、SDGsというのは必ずしもそれぞれ単体で考えるべきではないということを学びました。環境と一筋に言っても、経済と深い関連があったり、貧困とは切っては切れない関係性を持っていたりと議論するにあたり、広範囲での知識が必要であることがわかりました。その点で言うと、2回目に参加した少人数で行われた学生のつどいはかなり有意義なものであったと思います。一つのテーマに参加者全員が意見を出し合うスタイルは聞き手側に回っても「なるほど、そういうアプローチもあるんだ」と終始驚かされていました。
個人的には、「阪大SDGs学のススメ。」は2021年度になっても継続して欲しいですし、少人数でより深い議論をする場もサークルのように定期的に設けて欲しいと思います。

 

自分の意見に対するフィードバックを得られました
工学部2年 つぶあんさん

私は科学技術を社会でより積極的に役立てるためには、自然科学を専門とする人間も社会に対して自発的にコミュニケーションの働きかけが必要なのだと確信を持つことできました。今回のイベントに参加された皆さんと共に実体験に基づく具体的な意見の交流ができたおかげだと思っています。
今回のイベントで私は「『文系』の人が『理系』の人に対する要望・所感」を、言語学・社会科学を専攻する学生の方に対して質問しました。私が志す材料化学をSDGsに役立てるために何ができるかを考えるための参考にしたいと思ったからです。実に多岐に渡る詳しい回答を得られました。
これらの意見から、私は共通点として2つのことを知ることができました。

〈共通点〉
1.科学技術に対する期待が高まっていること
それぞれの意見に込められた熱量の高さから、自然科学に関する知見の利用がSDGs達成のために大きな役割を果たすはずだという期待をひしひしと感じました。
2.コミュニケーションをとりたいが自然科学分野の人との関わり方がわからないこと

異分野の協力が重要だとわかってはいるものの、どう接すればよいかがよく分からないという戸惑いも感じました。
私は自然科学分野の人から異分野へコミュニケーションを働きかけることで協力への心理的ハードルを下げられるのではないかという、私がこれまで抱いていた考えに自信を持つことができました。今回のイベントでは、他の人との対話によって課題に対する視点が多角化することで自分の考えに対するフィードバックを受け取ることができました。

 

私にとっての「学生のつどい」
外国語学部3年 いちごさん

私が「学生のつどい」に参加するのは今回で2度目。SDGsに関心のある他学部、他学年の方と、リスペクトを前提に、多岐にわたりフラットに意見を交わすことができるこの場は、学部2年生の私にとって本当に魅了的な場です。今回の「学生のつどい」では、いくつかのテーマに分かれてセッションした前回とは違い、任意の参加者さんの話をベースに意見を重ねていくという形式のもと行われました。話し合われるテーマは参加者さんのお話によってはじめて決定されるため、普段アンテナを張れていないテーマについても考える良い機会となりました。
私はいま取り組んでいる活動があるのですが、その活動の認知度の上げ方や関心の集め方について相談させてもらいました。そのとき初めて知り合った1人の学部生の任意の活動に関する相談に対して、参加者さんだけではなく研究員の方や教員の方々までもが真剣にお答えしてくださったのです。まさにこの「学生のつどい」の、リスペクトを前提とした温かさを感じた時間でした。いただいた数多くのアドバイスをもとに、少しずつですが広報を進めております。今後もあたたかく見守っていただけたら幸いです。

<Myanmar’s Voicesの活動紹介>
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(今井貴代子 社会ソリューションイニシアティブ特任助教)