学生のつどい

第18回SSI学生のつどい開催報告
シリーズ「キャンパス・サステナビリティ」②
2023年11月2日(キャンパスを取り巻く自然環境との関わり」 )
 

<日時>  2023年11月2日(木)18:30~19:40
<場所>  オンライン・対面(SSI豊中ラウンジ)
<参加者> 15名
<プログラム>
・木本一希さん(工学部地球総合工学科2年)からの話題提供「キャンパスを取り巻く自然環境との関わり」
・参加者でディスカッション

第18回学生のつどい キャンパス・サステナビリティ②

シリーズ「キャンパス・サステナビリティ」第2回目(第18回SSI学生のつどい)では、木本一希さん(工学部地球総合工学科2年)が、「キャンパスを取り巻く自然環境との関わり」というテーマで話題提供をし、対面・オンライン合わせて15名の参加者による活発な意見交換が行われました。

木本一希さんからの話題提供「キャンパスを取り巻く自然環境との関わり」

木本さんからはまず、緑に囲まれたキャンパスライフがある一方で、その自然は「整備」されたものであり、そこに人間中心的なあり方があるのではないかと問題提起をされました。そして過去・現在・未来という時間軸のそれぞれにおいてキャンパスの開発がどのように行われ、自然環境の変化がどのように生じてきたかをさまざまな観点から説明されました。

豊中キャンパスはもともと里山だった待兼山を切り拓いてつくられたため、今でも都市に残された貴重な自然資源が見られる場所です。現在に至るまでのキャンパス開発の中でその生態系が壊されてきた経緯をさまざまな資料で示されました。そして世界的にもキャンパス設計時における環境への配慮が注目されていることから、大阪大学におけるキャンパス方針がどのようになっているかが紹介されました。大阪大学のキャンパスマスタープランでは低炭素社会、循環型社会、自然共生社会の実現が挙げられています。キャンパスにおける並木や植栽、樹林地などの維持管理の指針として、2011年に「大阪大学緑のフレームワーク」が策定され、これをもとにキャンパスが整備されてきました。SSI協力プロジェクト「大学と地域の共創による生物多様性保全」では地域連携しながら生物多様性の保全が取り組まれていますが、そうした活動についても報告されました。同時に大学の構造上の問題として、環境保全における費用が一定額は確保されても国立大学は私立大学に比べて少ないこと、また研究機関としての大学の強化よりもキャンパス空間への配慮はインセンティブが弱いことなどが課題として挙げられました。

この後、木本さんは大学生がどのようにかかわっていけるかをさまざまな観点から提案をされました。一つは里山と人々の関係が希薄になって以降、さまざまな形で自然環境が整備されてきましたが、「どんな整備が大切なのか?」、そして「人に良いことと自然系として良いことの違いは?」という問いを提示されました。また、大学における環境への配慮は、発言の難しさやマンパワー不足、予算の問題などの課題がある一方で、社会ではESG投資などが近年注目を集めています。そうした観点から「よいキャンパスとは?」「環境に配慮したキャンパスの社会的意義、大学の役割は?」といった問いが投げられました。最後に、行動につなげるためにどうしたらいいかという点から、問題意識を持った人から発信していくことで他者から協力を得る可能性が高まったり、楽しさというモチベーションこそが参加を促す可能性もあるといったことを述べて、「私たちに何ができるか?」と呼びかけて話題提供の時間が終わりました。

ディスカッション

この後、簡単な質疑応答を経て、グループに分かれてディスカッションを行いました。あるグループでは、豊中市・吹田市・茨木市・箕面市という北摂地域にまたがる千里丘陵が話題になりました。豊中キャンパスから吹田キャンパス一帯の千里丘陵の地盤は古期からの地層が同じで、住宅開発されるまでは自然環境が非常に豊かだったものの、今でもその一部がわずかに残っているという話が出ました。また別のグループでは箕面キャンパスが新たにできたことが話題になり、関連施設を一つの棟にまとめたことでトータルの延べ床面積が節約でき、エレベーターやトイレの数の減少につながり、維持管理費用は従来の半分に抑えることができた一方で、そのことと学生の主体的な活動を行う施設として利用しやすいかどうかは別もので、キャンパスづくりに学生の視点を入れることも重要ではないかと述べられました。

キャンパスと自然環境のかかわりをテーマにした回でしたが、時間軸や空間軸、誰にとってという視点の複数性、また方針やプランの策定の根拠、実施とその結果、大学経営や社会的意義などさまざまな観点から課題をとらえることができ、また対話を通じてさらに関心の輪を広げることができました。私たちが大半の時間を過ごしているキャンパスについて、知り考える機会となりました。木本さん、話題提供をありがとうございました。

(今井貴代子 社会ソリューションイニシアティブ特任助教)