学生のつどい

第10回SSI学生のつどい開催報告
シリーズ「地域の未来を考える」①
2022年8月24日(日本の地域はどのように変わってきたか)

<日時>  2022年8月24日(水)19:00〜20:40
<場所>  オンライン・対面(SSI豊中ラウンジ)
<参加者> 18名
<プログラム>
・堂目卓生SSI長によるSSIの理念と活動紹介「命を大切にする社会を目指して」
・上須道徳経済学研究科教授による話題提供
・参加者でディスカッション
(司会:上須道徳 経済学研究科教授)

日本の地域はどのように変わってきたか

2022年度の「SSI学生のつどい:阪大SDGs学のススメ。」はSDGsの目標の一つである「持続可能なまち・地域」にフォーカスし、日本の地方や地域の未来について対話を行う場を提供しています。

シリーズ第1回目(第10回SSI学生のつどい)では、堂目卓生SSI長からSSIの理念と活動の紹介をしていただいた後、上須道徳経済学研究科教授から「日本の地域はどのように変わってきたか」というテーマで話題提供をいただきました。学生のつどいはこれまでコロナ禍によってオンラインで開催してきましたが、2022年度からハイブリッドに移行し、参加者と活発な意見交換が行われました。

SSI長挨拶~命を大切にする社会を目指して

堂目SSI長からは、「命を大切にし、一人一人が輝く社会」を目指すSSIの理念と活動を話していただきました。これまでSSIで行われたきた場づくり、プロジェクト、社会との意識共有、SDGSの推進、万博に向けた取り組みなどが紹介され、SDGsのコンセプトである「誰一人取り残さない」について、またSDGs万博と言われる万博のコンセプト「いのち輝く未来社会」と「誰一人取り残さない」の関係性について話されました。大事なのは、取り残されている人が助けられてその人のいのちが輝くということだけでなく、取り残さない人がそうした人たちと向き合い、寄り添い、手を差し伸べることで取り残さない人のいのちも輝くことであり、そうした共感の力によって共創社会は達成されると述べられました。また万博の中で大阪大学が中心になって「いのち宣言」をみんなでつくっていく動きがあり、「阪大SDGs学のススメ」がこうした理念の上にあることを知った上で、対話をどんどん進めていってほしいと参加者にエールが送られました。

当日のスライドより 

話題提供者の話

上須教授から、冒頭にこの日の話題提供のポイントが2つ示されました。一つは地域をどうとらえることができるか。もう一つは地方創生や地域活性化などが全国的に進められているが、なぜ地域が大事なのか。こうしたことを考えるにあたって示唆となる「フレーム」という概念についても述べられました。「フレーム」とは物事の見方、枠づけのことで、どのように地域を見るかによって全く違った現象として映り、したがって問題解決策も変わってくることから、フレームを多様にもつことが大事であると話されました。

たとえば、都市と農村は表裏一体であり、人口の変化をみる際にも農村から都市への流出だけでなく、実際は人の行き来があり、情報やお金、農産物などで強い結びつきがあります。都市は農村がないと成り立たないにもかかわらず、農村が疲弊しているという事実があり、これらをどのように考えるかということです。上須教授が地域をとらえる視点として挙げられたのは、人が住み続けることで生活や関係性が生まれ、風土にあった生活習慣や文化、風習が生まれる、これらを培ってきたのが地域であるというものです。その地域から人がいなくなるとそれら文化もなくなってしまうということを上須教授は一つの見方として提示されました。

その後、日本の人口動態・分布に始まり、日本の都市部への人口集中、都道府県別にみた子どもの出生率のギャップ、若い世代の都市圏への転出などをデータから読み取り、国内の都市への人口の一極集中、地方での人口減少・過疎化高齢化などの構造が説明されました。また農林水産省の『食料・農業・農村白書(2022年度版)』などから農村振興に向けた政策などを確認し、上須教授が取り組む山間地域での大学と地域の協働事例が紹介された後、ディスカッションへと移っていきました。

意見交換・感想共有

意見交換では、この日のディスカッションのテーマである「地域を見るとき、どう見るか」「地域活性化は必要か」といった内容に始まり、どのような生活を送りたいかという自分事の話にも発展していきました。

たとえば、仕事の仕方や住み方がもっと柔軟になることで、都市か地方かといった二択ではなく、子育てや趣味、仕事、ライフコースに応じて都市と地方を行き来するような選択ができるかもしれません。中核都市と地方を結ぶ交通網が発達し、通信技術が発展することによって、複数の場所に拠点を置きながら生活することも不可能ではありません。それには兼業や副業へのハードルがもっと下がる必要があります。上須教授は十津川村の事例を通して、複数拠点での生活や副業・兼業の働き方といった仕組みづくりが提案されました。

それ以外に海外に目を向けて、少子化を克服した国ではどのような政策がどのような理念のもとで取り組まれたかについて、人とのつながりやコミュニティと人間の幸福度の関連性についても意見が出されました。

シリーズ「地域の未来を考える」では、「持続可能なまち・地域」にフォーカスして日本の地方や地域の未来について対話を行っていきます。林業や農業、また教育といった現場や地域における実践者(大阪大学の卒業生を含む)からも話題提供をしていただきます。2022年の学生のつどいも、SDGsなどのグローバルな価値を自分事化していくために、いろいろな分野の知識をつなぎ、人とつながり、行動に移すきっかけとなる場づくりに取り組んでいきたいと思います。

(今井貴代子 社会ソリューションイニシアティブ特任助教)