車座の会

第2回SSI車座の会開催報告
2019年11月8日

第2回のSSI車座の会の概要

11月8日(金)、第2回車座の会を大阪大学会館の豊中SSIラウンジにて開催しました。SSI長の堂目卓生教授や講演者の貝崎勝氏、森内真也氏を含め20名が集まりました。以下に、概要を報告します。

プログラム

第1部 15:00~18:00
・「理念共鳴経営の実践」
貝崎 勝氏(オムロン株式会社サステナビリティ推進室企画部長)
・「未来を描き、バックキャスティングする」
森内真也氏(未来新聞代表)
・「企業、業界、社会の長期的な持続性を確保するためには」対話
第2部 懇談の場 18:00~19:00

オムロンの貝崎勝氏からの話題提供

まず、オムロン株式会社(以下、オムロン)の貝崎勝氏の「理念共鳴経営の実践」と題したお話がありました。概要は以下の通りです。
オムロンの創業者である立石一真の考えと行動に基づく社憲と行動指針からなる企業理念体系や、その理念に共鳴した経営を実践するための取組みについて話されました。オムロンでは現在、次の10年に向けた長期ビジョンを検討する段階に入っており、それに関連して、1970年に2033年までの将来を予測したSINIC理論を解釈し直しているといった背景についても説明されました。
貝崎氏は、オムロンの企業理念に基づく具体的な取り組みであるTOGA(The Omron Global Award)についても解説されました。TOGAは、オムロンの理念に合致した様々な取組みについて、グローバル全社から共有してもらい、優れた実践を表彰し、その理念共鳴の事例を全社で共有するものです。現在の山田社長が就任してほどなく始まったこのTOGAの開始のきっかけとなったのは、インドネシアにおける障がい者雇用の実践でした。創業者の立石一真は、企業とは「社会の公器」と考え、社会福祉法人太陽の家との合弁で、障がい者雇用の場としての福祉工場、1972年にオムロン太陽株式会社、1985年にオムロン京都太陽株式会社を設立しました。オムロンの経営理念体系にある3つのOur Values(私たちが大切にしている価値観)の最もベースにあるのは、「人間性の尊重」であり、すべての人の活躍を大切に考えています。「企業の公器性」「人間性の尊重」といった理念に接し、オムロン太陽を訪れたインドネシア現地法人の社長は、理念と実践に共感し、インドネシアでも実践を始めました。その後、彼は、障がい者雇用を行う会社のトップとしてインドネシアで高く評価されるとともに、この活動がきっかけとなりインドネシア政府を巻き込んだ障がい者雇用の促進にまで発展しました(注)。このように、理念に共鳴した人々の実践を共有するTOGAは、現在ではオムロンの企業文化を象徴する取り組みとなっています。
貝崎氏の話の後、参加者の中からは、TOGAのような理念実践に関する取り組みを会社全体で進めていくことは容易ではないという率直な意見も挙がりました。貝崎氏は、立ち上げ時の苦労や状況、毎年続けていく中で変わっていく社員の意識の変化などについて、現場での経験に基づいた臨場感ある話をして応えられました。その上で、TOGAの運営体制や、企業理念の実践とサステナビリティの取り組み、社内に広げるために工夫しているその他の取り組みについても説明し、率直な質疑応答や議論につながりました。

(注)2019年のアニュアルレポートに、TOGAの始まりや取組み例についての記事があります。

https://www.omron.co.jp/ir/irlib/pdfs/ar19j/OMRON_Integrated_Report_2019_jp_23.pdf

未来新聞の森内真也氏講演

続いて、未来新聞の森内真也氏が、「未来を描き、バックキャスティングする」と題し、未来構想の方法論について話しました。自身の人生経験も踏まえた未来新聞を作るまでの過程を含め、未来新聞の意義と方法論について話されました。
「VUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, and Ambiguity)」や「シンギュラリティ(人間の知性の及ばないレベルに、AIなど機械知性が到達すること)」という言葉に代表されるように未来の予測が難しい現代では、AプランだけではなくBプランやCプランと多くの可能性をみんなでつくることが重要と話されました。
未来を創造するためには当事者意識や脳の活性化、共感が必要であり、ワクワク楽しみながら様々な分野、組織の人との作業が必要になります。未来新聞では、未来の日付をつけて、それがすでに起きたかのように未来の出来事を書くことで、臨場感のある未来のビジョンができあがるとの説明がありました。
その後、実際に参加者全員で未来新聞を書いてみました。「2025年〇〇初!■■を実現した自分」をテーマに、たくさんの未来のアイデアを付箋に書きだしてみて、それらいくつもの未来の可能性のうちの一つについて、なぜそうなったのか経緯を含めて記事としてまとめます。その後、その未来記事が起きた理由を過去にさかのぼるバックキャスト記事や、その後に起きた未来展開などを自由に子供の記事(「子記事」)として書きました。参加者が書いた記事はSSI-AGEHAという新しいクラウドシステムに掲載され、子記事とともに参加者全員が閲覧できるかたちで共有されています。

(伊藤武志 社会ソリューションイニシアティブ企画調整室員)

参加

参加企業・組織:11社13名
伊藤忠商事株式会社、大阪ガス株式会社、オムロン株式会社、株式会社カルティベイト、キッコーマン株式会社、グンゼ株式会社、コクヨ株式会社、サントリーホールディングス株式会社、大和ハウス工業株式会社、日本たばこ産業株式会社、ノックオンザドア株式会社(五十音順)

運営主体(大阪大学):5名
堂目卓生(SSI長, 総長補佐、経済学研究科教授)、伊藤武志(SSI教授)、井上大嗣(SSI特任研究員)、田中翔(同左)ほか