学生のつどい

第9回SSI学生のつどい×阪大SDGs学ゼミ
開催報告
地方・地域とSDGs~学生と教員からの話題提供

<日時>  2022年4月25日(月)18:00〜19:40
<場所>  オンライン・対面(@全教総合棟Iカルチエミュルチラング)
<参加者> 21名
<プログラム>
・上須道徳経済学研究科教授からの話題提供
 宍粟市スタディツアーの概要と「地方・地域とSDGs」
・宍粟市フィールドスタディに参加した学生からの話題提供
 発表者:中野祐介さん、中野立開さん、伊東美穂さん、土井結花子さん、谷崎文那さん
・ディスカッション

学生のつどい×教養ゼミ

 大阪大学社会ソリューションイニシアティブでは、「阪大SDGs学のススメ。」と題して、学生たちがSDGsにかかわってさまざまに対話や交流をする場づくりをしています。また、SDGsに関わる様々な話題について対話を積み重ね、「SDGsを自分事にするための知」や「協働のための知」を創ることを目指す、阪大SDGs学のための教養ゼミナールも開講しています。今回、第9回SSI学生のつどいと第9回阪大SDGs学のための教養ゼミを合同で開催しました。

宍粟市フィールドスタディの概要と「地方・地域」

 まず、教養ゼミを企画されている上須道徳教授から、3月に実施した宍粟市フィールドスタディの概要と、これまでのゼミのまとめとして「地方・地域」について話題提供ありました。

 宍粟市(兵庫県)フィールドスタディは、学生のつどいで学んだことや紹介された取り組みなどをベースにしながら、現場で実社会の課題に触れ、それらに取り組む方々と出会い、交流し、SDGsをフィールドから考えていくために企画されました。2022年3月14日~15日に実施され、7名の学生が参加しました。具体的には、宍粟市商工会、(社)北の風・南の雲等の協力をいただき、現地での調査、交流、ワークショップを通じて、住み続けられるまちづくり、環境問題や社会包摂について地域の視点で考える活動を行いました。「SDGsを自分事にするには? 」「「知」の地方化を図るには?」「地方に若者を呼ぶためには?」といった問いをもとに、学生たちが地元の方々と学びあいました。(プログラムは以下のスライドを参考)

 

 上須教授からは、こうした問いを考えるにあたって前提となる「地方・地域」についての話題提供がありました。日本の都市部への人口集中、都道府県別にみた子どもの出生率のギャップ、若い世代の都市圏への転出などをデータから読み取り、国内の都市への人口の一極集中、地方での人口減少・過疎化高齢化などの構造が説明されました。そこから、地域をどのように再定義していくことができるかという観点から、地域の自律・自治の重要性、そして大学の果たせる役割について話をされました。
 この後、宍粟市フィールドスタディに参加した学生による報告があり、学生たちから、「住み続けられるまちづくりとは?」「地方や地域に若者を呼ぶためには?」「そもそも地方や地域の活性化は必要なのか?」といったテーマが提起され、参加者でディスカッションをしました。

参加した学生からの話題提供

 中野祐介さん(本学法学部出身、現在京都大学大学院公共政策大学院博士前期課程1年)は、京都京北地方で地域おこし協力隊の仕事をしながら、今回のフィールドスタディにはTAとして参加しました。その際、感じたこと、疑問に思ったことを2つ話されました。一つは、地方創生・地方活性化は、国の施策として取り組まれて10年以上たつけれど、問題が改善する見通しがないなか、地方創生や地域活性化に対して新しい見方が必要なのではないかということ。もう一つは、北の風・雲の風のスチンフ先生が提言されている「知の地方化」について、それが住み続けられるまちづくりにどのような役割を果たすのか、具体的なことを参加者と一緒に話し合いたいと呼びかけられました。

 

 谷崎文那さん(基礎工学部情報科学科2年)は、自身が地方出身者であることから、一市民として地方創生について考えたいと思い、フィールドスタディに参加されました。まちあるきをして感じたことを4点で話されました。一つめは、人の手が入っている場所と入っていない場所の差で、宍粟市で有名な紅葉、酒蔵、町屋ホテル、重要文化財など魅力的なところが多くある一方で、偶然入った駐車場近くの公共トイレに蜘蛛の巣があり、瞬間的に嫌だなと思い、人の手が入ることは大事だと思ったこと。二つめは、便利な情報システムの活用具合で、昼食のお店をGoogleで検索したが、ぱっと出てこず、地域の人に聞いたらすてきなお店を教えてもらえたというエピソードから、せっかくの情報が伝わらないのはもったいないと思ったこと。それに関連して、三つめは、地域の人がやさしくお店を教えてくださったことや、フィールドスタディで出会った方々が暖かく、「人の暖かさや空気感は魅力の一つ」だと感じたこと。こうしたことから、五つめとして、決して「人が少ない≠魅力が少ない」ではないということを、どのように情報提供していけるかということ。こうしたことを一般の観光客に向けて、うまく伝えることができたらいいのではないかと話されました。

 

 土井結花子さん(人間科学部共生学系3年)からは、地方と若者のかかわり方について話題提供がありました。宍粟市は発酵のふるさととして有名で、まちあるきの中で見つけた伝統的な酒蔵や発酵食品のお店がとても魅力的だったといいます。こうした観光を用いた若者の呼び込みは一つのアイデアではありますが、観光は一度きりの関係で終わることが多いので、今回のフィールドスタディのように、知の地方化、知の実践ということであれば、継続して若者が地方にかかわれるのではないかと話されました。宍粟市にはスチンフ先生が住んでおられ、学生が大学や授業としてかかわれるのがよく、大学生には卒業という節目があるけれど、先輩から後輩へとつなぐことができるのではないかと話されました。丹波篠山で地域再生協働員をされている置塩ひかるさんが話されていた「学びと実践の繰り返し」という言葉を紹介され、知の実践が地方と若者との新しいかかわり方になるのではないかと話されました。

 

 伊藤実穂さん(人間科学部共生系3年)からは、地域活性化は必ずしも必要かという観点から話題提供がありました。伊藤さんは、大学の授業で知った「尊厳ある縮退」という、まち・集落が閉じて新しく創生していくプロセスについて、縮退していくなかでも地域の人たちが幸せだと感じられ、自律的であることを目指すあり方や概念を紹介されました。人口減少社会において、現実を見据えた施策をどのように進めていくのか、行政が移住施策を進めても、地域の理解が得られないという話もあるので、地域の人自身が地域を活性化したいと思っているのか、今回のフィールドスタディでも、宍粟の人の目線になって考えることが大事ではないかと話されました。観光地化することが適正かどうかもわからないが、一方で、マスの養殖をして地域の名産品をつくろうとしている人たちの動きもある。地域活性化が必要かどうかの答えは見いだせないので、みんなでディスカッションをしたいとまとめられました。

 

 中野立開さん(人間科学研究科博士前期課程1年)は、鹿児島県鹿屋市での地域活性化の取り組みと出会い、地方創生に関心をもち、自主研究をはじめるようになったと話されました。フィールドスタディで宍粟市のまちを歩き、地域の方々の取り組みを知るなかで、地域活性化に必要な要素として、「風土資源」と「人資源」があるのではないかと考えたそうです。中野さんいわく、風土資源とはその土地の潜在的な資源のことで、豊かな自然と生活に集積された歴史。宍粟市には、最上山紅葉祭り、発酵の文化、城下町山崎中央通などがあります。人資源とはその地域の「おもしろい」人の存在で、それは内部/外部を問わないのではないかと話されました。今回はスチンフ先生やスチンフ先生が一緒にマスの養殖に取り組んでいる地域の方々、町屋ホテル「碧雲」を運営されている商工会会長の長田博さんなどが挙げられました。こうした風土資源と人資源は双方向につながっていて、相乗効果を生み出すので、地方創生の手がかりになるのではないかと話されました。

「住み続けられるまちづくりとは?」「地方や地域に若者を呼ぶためには?」「そもそも地方や地域の活性化は必要なのか?」――みんなでディスカッション

 教員と学生からの話題提供の後、会場参加者とオンライン参加者に分かれて、ディスカッションを行いました。

「ちょっと行ったら田舎、ちょっと行ったら都会という環境がいいという話が出た。また、一か月の間、何日間か田舎で、何日間かは都会という過ごし方もいいという話も出た。Uターン、Iターンだけでなく、Jターンという形もあるので、いろいろな地方とのかかわりがあるのではないか。」

「スチンフ先生の取り組みから思ったことは、まち全体で大規模なことをするのではなく、小さくてもこつこつすることがいいのではないかということ。まちおこしという言葉だと、課題が大きくなってしまい、取り組むハードルが高い。自分のやりたいことをこつこつやるのがいいのではないか。」

「地方創生や地域活性化をテーマにするとき、どの地域課題に焦点を当てるかを明確にしないと、議論がしにくい。地域活性化は必要だが、その手法が大事。都市部の人が考えた論理規模が大きくなっていく場合、よかれと思っていたことでも、地域の人が求めていたものではなかったという話になってしまうこともある。」

 このように多様な意見が出て、実りあるディスカッションとなりました。
 コロナ禍でスタートした「阪大SDGs学のススメ。」でしたが、今回はじめてのハイブリッド開催となり、対面での対話をすることができました。2022年度は、「地方・地域とSDGs」を一つの切り口にして、地方創生・地域活性について、座学で学び、かつ、ゲストスピーカーからの話題提供を通じて対話する場をつくっていきたいと思います。答えは一つではありません。今後、これらを蓄積して、具体的な活動につなげていけたらと思っています。