学生のつどい

第20回SSI学生のつどい開催報告
シリーズ「キャンパス・サステナビリティ」④
2024年2月8日(キャンパスの多様性と包摂について~月経を知る~)
 

<日時>  2024年2月8日(木)18:30~19:30
<場所>  オンライン・対面(SSI豊中ラウンジ)
<参加者> 13名
<プログラム>
・高野七緒さん(外国語学部4年生)からの話題提供「キャンパスの多様性と包摂について~月経を知る~」

第20回学生のつどい キャンパス・サステナビリティ④

シリーズ「キャンパス・サステナビリティ」第4回目(第20回SSI学生のつどい)では高野七緒さん(外国語学部4年生)が、「キャンパスの多様性と包摂について~月経を知る~」というテーマで話題提供をし、13名の参加者と活発な意見交換が行われました。

高野七緒さんからの話題提供「キャンパスの多様性と包摂について~月経を知る~」

高野さんは幼い頃からジェンダーや性差別に関心を持ち、大学生となった現在、こうした社会課題に対して写真を用いて表現したり、月経をめぐっては同じような関心をもつ学生と一緒に「Jane Doe」という団体を立ち上げて取り組んでいます。

まず参加者に向かって「みなさん、月経にどのようなイメージを抱えていますか?」という問いかけからスタートしました。多くの場合「月経を持つ人」「月経を持たない人」でイメージに差があり、意見が違ってくることが多いかもしれません。高野さんは、経験の有無もあるかもしれないが、それ以上に知識(を得る機会)がないことや、社会に触れていけないというタブー視があることが、そうした背景にあるのではないかと話します。そして、なぜ生理現象であるはずの月経がタブー視されているのかについて、けがれや女人禁制などとつながる宗教観や衛生環境面などが過去からあること、また現在においては家庭教育や学校教育でのタブー視や男女別指導、生理用品を不透明袋で中身を見えなくするなどの社会にある暗黙のルールなどが要因ではないかと述べられました。一方で、「生理用品を隠す袋、いりません」というプロジェクトが生まれたりするなど新しいアクションがあることも触れられました。また、会場参加者の中にも学校教育で男女一緒に生理について学んだという人が数人いました。

次に「月経のもつ人」の身体面の影響やその問題が放置されることによる経済面の影響についてもさまざまなデータをもとに紹介されました。こうした月経をめぐる問題は今のところ「月経経験者/経験予定者」である社会構成員の約半数でしか共有されにくくなっています。現在、少しずつですが社会によるサポートが行政・企業・教育機関等で取り組まれ始めています。大阪大学でも生理用品の無償配布に取り組むMeWプロジェクトがあります。月経タブー視が理解不足を生み、その理解不足がさらにタブー視を生むんでいるというサイクルを打開し、この課題を社会全体で認識するにはどうしたらいいか…ディスカッションでこうした問いを参加者で話し合いました。

ディスカッション

現在取り組まれているもの以外にも、月経をめぐる課題に対してどのように持続可能なサポートにしていけばよいかについて、グループに分かれて対話を行いました。

どのグループでも教育から変えていくことの重要性が議論になりました。小中学校のうちから一緒に学ぶことが当たり前となる環境整備が必要ではないかという話に始まり、知識を得る機会を増やすために関連する本を図書館や地域の施設に置くのはどうかといったアイデアが出たり、ゼロ歳から包括的性教育に取り組んでいる海外の事例についても紹介がありました。
生理休暇の取得はハードルが高いのではないかという話も話題になりました。そもそも有給休暇を取ること自体ハードルが高いので、まずは有給休暇を取りやすい環境をつくっていくことが結果的に生理休暇のハードルを下げるのではないかといった意見や、産休・育休にも関連づけた生活休暇という包括的な休暇制度によってハードルを下げていくのはどうかといったアイデアも出ました。
具体的ですぐにでも取り組めそうなこととしては、救急セットや医療キットに生理用品を入れておくというものです。常備品としてあれば、月経あるなしに限らず誰でもそこから生理用品を出して相手に差し出すことが普通になるのではないかということでした。また「特別な配慮やサポート」となるとタブー視を助長するのではないか、月経をめぐる問題がどこにあるのかを掘り下げて考えていくことも重要ではないかといった意見も出ました。

盛り上がったディスカッション後、最後に高野さんからは、若い人たちでこのテーマについて話せたこと自体がとても有意義だったと述べられました。上須教授からは、キャンパス内の多様性や包摂について学生発信で考え、対話していくことがとても重要で、今後はこれまでの話題提供やディスカッションで出てきた意見をまとめて、可視化・発信していくことをしていきましょうと提案されました。

話題提供で高野さんが話されていたように、これまでの月経をめぐるサポートは家族や親しい友人などに限定されていました。友だちや保健室の先生に「(ナプキン)一枚貸して」「ちょうだい」という個人間の貸し借りでした。今回の学生のつどいでは、これを社会の問題として考えていくためにどのような取り組みが必要かについて話し合いましたが、こうした対話が個人間のサポートや個人的とされた問題を社会に開いていく一歩なのかもしれません。高野さん、ありがとうございました。

(今井貴代子 社会ソリューションイニシアティブ特任助教)