SSIサロン / シンポジウム

第9回SSIサロン開催報告
「アフリカ 未来社会」

<日時>  2019年11月21日(木)18時〜20時30分
<場所>  大阪大学会館2F SSI豊中ラウンジ
<参加者> 32名
<プログラム>
・開会挨拶   堂目卓生 SSI長・経済学研究科教授
・話題提供1  小川さやか 立命館大学先端総合学術研究科教授
       「無条件であることの条件を追求する
        ― タンザニア人の商売とその日暮らしを事例に」
・話題提供2  栗本英世 SSI副長、人間科学研究科教授
       「無国家状態、内戦、低開発を生き抜く
        ―南スーダン、パリの人たち」
・話題提供3  木多道宏 SSI企画調整室長、工学研究科教授
       「アフリカの非正規市街地から構想する未来の都市計画」
・ディスカッション
 ( モデレーター:木多道宏 SSI企画調整室長・工学研究科教授)
・食事をとりながらのダイアローグ

「アフリカ 未来社会」、今回のサロンの目的

「 アフリカ 未来社会 」。今回のサロンの目的は、アフリカにとってあるべき未来社会の姿を論じることではありません。先進国である日本が、発展途上にあるアフリカ諸国のモデルになると主張することでもなく、また、「伝統が色濃く存続しているアフリカでは、近代化のために私たちが失ってしまったものを見い出すことができる」といったノスタルジックなイメージを投影することでもありません。現在のアフリカにおける経済や社会のあり方が、日本における未来社会を構想するうえでモデルになる可能性を検討することです。

タンザニア、南スーダン、ガーナ、さらには香港、そして日本にまたがる空間のなかで視点を移動させつつ、国境を越えた人とモノの移動、人と人とのつながり、人と場所・故郷とのつながり、人びとの「生きる力」を、具体的事例を踏まえながら検討します。背景には、グローバル経済の展開、個人-共同体-国家の関係、そして「近代」と「脱近代」とはなにか、といった問題群があります。最終的には、人間が人間らしく生きるとはどういうことか、これを議論することが、今回のサロンのテーマです。

まず、SSI長である堂目卓生教授からはSSIの理念、SSIサロンや基幹・協力プロジェクトの紹介の後、今年度の取組についての話がありました。特に2019年度はアフリカを主題とした6月の歌手のMISIAとJICAの講演会や、10月に行われた木多道宏教授をリーダーとしアフリカ・ガーナをフィールドとするSSI基幹プロジェクトのキックオフ・シンポジウムについても紹介がありました。

話題提供者のお話から

小川さやか氏からは、「無条件であることの条件を追求する―タンザニア人の商売とその日暮らしを事例に」というお話をいただきました。日本のような社会における確実性や安定性のある信用システムと、タンザニア人がアフリカでも香港でも持っている、贈与・分配システムに安定性を求めず、コミュニティ内でのやりとりを楽しいゲームのように実行しているような不確実だが包摂的な関係性による仕組みがあることを指摘された。そのどちらが優れているということではないし、どちらかという二者択一でもないだろうといった視点が示されました。また、アフリカにおける道徳フリーな笑いの存在についてのお話もありました。
栗本英世氏からは、「無国家状態、内戦、低開発を生き抜く―南スーダン、パリの人たち」と題した話がありました。南スーダンのパリ人が、幼児死亡率は2、3割に達し、内戦で多くの人が亡くなるような状況下で、弱者救済の制度もないというある意味でドライ、冷徹な社会にもかかわらず、それでも歴史的に培われたと思われる運命主義と寛容性を持ちながら、共に生き続けていることが示されました。
木多道宏氏からは、「アフリカの非正規市街地から構想する未来の都市計画」と題した話をいただきました。ガーナ・アクラの非正規市街地ラ地域のAbeseに見出した、開かれた路地という空間に象徴される公も私もない「共」のコミュニティ運営やマチづくりについての話がありました。この共の大切さには学ぶべきところがあり、それをアフリカに残し、拡げたいといった話がありました。

対話とその先へ

対話の時間には、ある先生が、アフリカから受け入れた留学生が、しばしば研究室に長い時間過ごしていたエピソードを話された。時間を共に過ごすことは、時間を差し上げることだし、その時間をアフリカの人々のような自然な笑顔や笑いを伴って温かくつかうことが、家庭においても、教育の現場においてもとても大事だろう。日本でも昔は、Abeseのような開かれた路地があり、マチのなかでともに時間をすごすことができたが、今では、壁ができて空間が遮られ、時間も過ごせなくなっていると述べられました。他の参加者も、笑いと路地の大切さについてのコメントがありました。

3氏が指摘されたこと、対話で指摘されたことは、いずれも日本には無い、少ない、あるいは少なくなった人間観、視点、実践であり、日本人として世界に生きる人間としても、これらを学び、受け入れ、そして活かすことは、こらからの未来社会において、とても重要なことであると強く感じられました。