さまざまな場

11月4日(土)イベント開催報告
第1回 いのち共感祭
”輝く未来へのとびら、アートで感じる「いのち」”
 

<日時> 
2023年11月4日(土)14:00~17:00

<場所> 
ハイブリッド(大阪大学中之島センター5階「いのち共感ひろば」+オンラインウェビナー)

<プログラム>
・挨拶
 堂目卓生 大阪大学SSI長
  タイトル「『いのち会議』『いのち宣言』について」
・合唱 東京こどもアンサンブル
・話題提供
 輪島 裕介 (大阪大学 人文学研究科 教授)
  話題提供前のアイスブレイク
 菊川 穣(エル・システマジャパン 代表理事)
  「誰もが自由で、創造性を発揮できる共生社会:音楽を通して次世代を育む」
  (活動紹介サイト https://www.elsistemajapan.org/
 佐藤 言(社会福祉法人ラルシュかなの家 理事・施設長)
  ラルシュかなの家 知的障がいのある人のギフトを伝える」
  (活動紹介サイトhttps://larchejapankana.localinfo.jp/
 鈴木 大輔(株式会社アートローグ 代表取締役CEO)
  「大阪・関西の成長戦略として万博を機に 大阪関西国際芸術祭開催に向けて」
  (活動紹介サイト https://www.artlogue.org/
 松本 文子(大阪大学 工学研究科 地球総合工学専攻 特任准教授、国立民族学博物館 機関研究員)
  「アートプロジェクトが育む共感の力 創造性、寛容性から創造的継承へ」
  (活動紹介サイト https://www.ayakomatsumoto.com/
・パネルディスカッション
 話題提供者パネルディスカッション

※タイトル等をクリックすると動画をご覧いただけます。

開催報告

11月4日(土)、いのち会議市民部門 キックオフ 第1回 いのち共感祭 ” 輝く未来へのとびら、アートで感じる「いのち」”を大阪大学中之島センター「いのち共感ひろば」とオンラインのハイブリッドで開催しました。SSI長の堂目卓生教授や話題提供者の方々含め会場には90名、オンラインには38名が集まりました。以下に、概要を報告します。

堂目卓生 大阪大学SSI長 「SSIから『いのち会議』『いのち宣言』へ」

✔「Capable」と「Vulnerable」の共助社会像の提示、いのち会議・宣言の概要説明
→アートを通じていのちを「かんじる」ための場の開催

東京こどもアンサンブルによる合唱

✔こどもたちが互いに助け合いながら、一緒に歌い上げた素晴らしい合唱

モデレーター:輪島 裕介 (大阪大学 人文学研究科 教授) 話題提供前のアイスブレイク

✔音楽学:人間の営みとしての音楽・踊りの場の研究⇔芸術としての音楽
✔演者と観客の垣根、創られた伝統(演歌)と地場の文化(としての領有、ブギウギ)
→「モノ」ではなく行為・社交・儀礼・祝祭としての音楽(e.g.ブラジルのカーニバル)
✔「生きることがそのまま祝祭になるように」:群衆の中で誰でも踊れるように

菊川 穣(エル・システマジャパン 代表理事)「誰もが自由で、創造性を発揮できる共生社会:音楽を通して次世代を育む」

✔エル・システマ:理想とする音楽教育のシステム(誰でも参加、合奏優先)
✔世界各地で独自のPGを展開;地域独自の社会課題に対応、国家・民間の混在
✔被災地で始まった日本:誰でも無償で参加、共創と芸術、こどもの権利・尊厳、当事者・地域の重視(オーナーシップ)、学校・行政と連携→世界と連携へ
⇒誰も取り残されない自由で民主的な居場所創り、こども→親→地域社会→世界
*5つの信条:喜び、ケア、尊厳、芸術性、責任
✔課題:地方の中の地方、部活動(学校から地域へ)、マイノリティ→体験格差

佐藤 言(社会福祉法人ラルシュかなの家 理事・施設長)「ラルシュかなの家 知的障がいのある人のギフトを伝える」

✔健常者と障がい者(なかま)の交流:一緒に食べ、祈る→相互の関係による変化
✔「なかま」との交流の中で学ぶ「価値」、弱さの意味、支援・被支援+友情
✔(動画)なかまとみんなが参加できる活動:バンド、踊り、身体表現、世界連携

鈴木 大輔(株式会社アートローグ 代表取締役CEO)「大阪・関西の成長戦略として万博を機に 大阪関西国際芸術祭開催に向けて」

✔アートログ:社会包摂・地域間格差解消を目指す、行財政界の支援
✔日本:芸術の重要性認知⇔美術品市場の小ささ(世界の1%未満)、東京一極中心
✔社会問題と無関心→「炭鉱のカナリア≒芸術家」の力、課題の表現(経済規模も)
✔変革のきっかけとしての万博を機にした大阪関西国際芸術祭の提案
→見る場だけでなく、「買う」場としてのアートフェアも一部として展開
✔国際展開:万博に訪れた人がリピーター促進、芸術祭を通じた外交、経済効果
→万博を未来への加速装置として活かす:国際芸術都市大阪として未来へ
←江戸から明治・大正にかけて栄えた上方文化を再び
✔仕事・雇用の創出:アートに関わる仕事の創出が国際芸術都市になるには必要

松本 文子(大阪大学 工学研究科 地球総合工学専攻 特任准教授、国立民族学博物館 機関研究員)「アートプロジェクトが育む共感の力 創造性、寛容性から創造的継承へ」

✔大地の芸術祭 妻有トリエンナーレ:高齢化・限界集落における芸術祭に多くの観客が集まり、地域・自然の美しさを伝える→アートを通じた地域作りへの関心
✔地域づくりの変容とアートPJ:量的→質的開発、経済的・社会的・文化的価値
→社会的(課題解決)・文化的(アイデンティティ)価値をいかに図るか
✔ソーシャルインパクト:投資によって産み出される社会的・環境的変化、共感力
*GCI:技術・才能・寛容性を図る、日本は寛容性の価値指数>>>自己表現指数
✔違いを超えるCodesign:作者と自分(見る側)の感覚・問題意識の共感
←創造的継承:(自然風景など)美しい夢の跡が蘇るような作品群の存在
⇒寛容力(違い・弱さの受け入れ)・創造力(小さい/見逃しに価値)・創造的継承

パネルディスカッション

◆誰のために誰にむけて活動しているのか(誰が享受するのか、誰のための価値)
菊川:あくまでベースはこどものための活動。その上でこどもをとりまく学校・家庭など地域社会全体が自分事として関わっていけるように(⇔文化・芸術サークルの内輪向けの文化・空気感、こどもの取り合い)
佐藤:私たちは私たちとしかいいようがないが、ラルシュは「なかま」が主導権を持つ場。不思議となかまから教えてもらえる力・価値をもっと社会に広まれば
鈴木:(グローバルノースの富裕層の投機対象になる可能性も往々にあるという問いかけにも対して)リアルな人とのコミュニケーションをしながら展開したい。社会包摂・社会問題とアートの関係についてはまず「劣悪な労働環境」の問題、食べていけないアーティストの生業の場の創成(その先の投機市場の危惧)、世界のマーケットで得た利益を地域に還元するサイクルも重要→産業の基盤の確立
松本:(地方の)地域づくりとアートを始めた際に、アーティストのアイデア、作品を通じた地域の苦しさの表象が明らかにすること・元気づけることの力。地域の(開発的な意味での)活性化だけでなく過去の掘り起こし。ただ、そのためには力がある作品ではないと波及効果を生み出せないという点も重要
輪島:アートという言葉・枠組みの便利さに対して、取りこぼされるものが存在。むしろアートという言葉をハックして、使い倒すことで変容される可能性

◆持続可能にしていくための戦略
松本:人間の営み全てがアートたりうる。ソフト面の活用によって様々な分野の活動がアートに(大地の芸術祭における農業・土木の活用)
鈴木:まさにアートを使い倒している側。どうやって社会・経済との接点を作っていくのかがプロデューサーの仕事。その際に元々考慮の外にあった地域性、政財界への着目(やればやるほどアートから離れていく)
佐藤:なかなか人が入ってこない福祉の分野に人を集めていくためにアートの創造性の力を活かしたい
菊川:被災地での支援から初めてゼロから始めて、はじめは日本でエル・システマが出来ないと思っていた←元々日本は音楽教育の環境に恵まれていた(学校教育+部活動+音楽教室)⇔「音楽を万人に」の原点にある思想(権利・尊厳、地域)の不在→強固なインフラ+エル・システマの思想による活動を強固に

◆相互質問
佐藤:社会福祉法人の運営の合間にバンド活動している後ろめたさ→創造性の重要性を(主に松本さんに)教えてもらって力強い
松本:世界的なラルシュの展開とかなの家の展開の間のズレをどうするか
→佐藤:日本らしさ・日本風のラルシュをさがして「ちんどんバンド」や「盆踊り」
→菊川:Inspireプログラムとしてのエル・システマというベースの上で、作曲教室などオリジナル展開をしていく中で、大人は「創造性が重要だ」というが学校教育が力を入れるような内容になってないところでエル・システマ・ジャパンの活動はその一助になっている様に感じている
鈴木:新しいビジネスモデル確立による自走化(豪州などでは大分進んでいる)→どうやって経営者としてやっていこうとしているのか
→佐藤:社会福祉法人としてもっと経営を考えないといけないが苦手。構造的に多くの「なかま」の人がきてくれるとお金(補助金や障害年金)が入るので、多くの人が来てくれるように価値を知ってもらうしかない。福祉の世界の人たちはお金の問題は苦手で、石けんなど色々創っているものをどうするかは考えたいし、教えてもらえたら
→菊川:一流の先生が来てくれる中で普通は成り立たない構造だが、自治体や団体と一緒に行う中で補助金や援助をもらって行えている。力をもらえる素晴らしいプログラムなんだと一人でも多くの人に伝えて支援の輪を広げるしかない

◆フロアから
朝日新聞:他者に関する寛容性の問題。松本さんの発表では日本は寛容性がいいと言っていたが、日本における外国人受入の問題とのギャップも感じたが、ホモジーニアスなコミュニティでの容性なのかどうか
→松本:初めて数字を見たときに驚いたが、同時に一度コミュニティの中に入った人には非常に高い寛容性を示している。その際に、一旦入るためのハードルの高さもある。ただ、だからこそ他人を思いやったり、察する力は日本の特性として世界に広めていける力でもあるだろう
今日の話題提供の中で「夢」という言葉がなかったが、前に進むには「夢(妄想)」が必要だと感じるがどうか
→輪島:懇親会で。ただ、みんなで見る「夢」は叶う(ジョン・レノン)もので、今日をきっかけに夢をみる輪を広げたい

論点まとめ

✔「人の営み」としての芸術の力:みんなが参加出来るアートの力をどう広げていくか+同時にアートの力をもたらしてくれる人々の暮らしを支えられる社会に
✔「アート」を身近に:いのちの力を「感じる」ためにもアートを身近に感じる様な試み・場の創出、価値をわかり易くする試み。伝統・歴史との接続という観点も
✔世界と地域、普遍性と特殊性:自分事化とも被る論点であり、より大きな創造力につながる厳選としての地域の文化・自然・歴史の力との接続→もう一度世界へ
✔「いのち≒生きること」のすばらしさ、力強さについてのメッセージ

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