地域・まちづくりフォーラム

第2回SSI地域・まちづくりフォーラム開催報告
「新たな防災」から命を大切にする未来社会を考える
2022年2月21日

<日時>  2022年2月21日(月)17:00〜19:30
<場所>  オンライン開催
<参加者> 44名
<プログラム>
・開会挨拶 堂目卓生/大阪大学SSI長・同大学院経済学研究科教授
・趣旨説明 木多道宏/大阪大学SSI副長・同大学院工学研究科教授
・話題提供
 堤研二/大阪大学大学院文学研究科教授
 「ネオソサエティ時代における地域生活機能と防災(人文地理学の視点から)」
 稲場圭信/大阪大学大学院人間科学研究科教授
 「減災と被災地復興の取り組みによる地域社会の再構築(共生学と宗教社会学の視点から)」
・第2回からご参加される自治体の方々のご紹介
・ディスカッション(モデレーター:木多道宏教授)

第2回SSI地域・まちづくりフォーラム開催概要

2022年2月21日(月)、オンラインにて、第2回SSI地域・まちづくりフォーラムが開催されました。12自治体18名を含む、40名の方にご参加いただきました。

本フォーラムでは、堂目SSI長による開会挨拶、木多SSI副長による趣旨説明ののち、文学研究科の堤 研二教授より「ネオソサエティ時代における地域生活機能と防災(人文地理学の視点から)」、人間科学研究科の稲場圭信教授より「減災と被災地復興の取り組みによる地域社会の再構築(共生学と宗教社会学の視点から)」というテーマにて話題提供いただきました。その後、第2回からご参加される自治体の方々の自己紹介があり、木多SSI副長によるモデレーターのもとでディスカッションが行われました。

ネオソサエティ時代における地域生活機能と防災(人文地理学の視点から)

堤教授はまず地理学の説明をされ、気候学、地震学、地形学などの自然地理学や、社会地理学、経済地理学、文化地理学などの人文地理学など多様な学問体系のお話から始められました。

そして以下のような地理学における広範な取組や課題についてお話をなさいました。東日本大震災の際に災害対策本部を設置し、現地調査の報告、浸水域の地図化と公開などを行った日本地理学会について。災害・情報・感染症などの伝播・拡散をシミュレーションできる計量地理学者ピーター・ハゲットのモデルについて。阪神淡路大震災に伴う人口と土地利用の変動、復興過程の商店主の復業・廃業の意思決定モデル、水害時の水没地域に関する研究などの卒業生・修了生の論文について。ネオソサエティ時代とは、ローカリティ、モビリティ、ネットワークを調整するプラットフォームをどう作るかという時代であること。ポストアーバン時代の特徴として、都市における再都市化、郊外の高密度化、輸送システムの拡張、都市と都市・非都市の結びつきなどがあること。産業のコンテンツ型からコンテクスト型へのシフト、新しい都市・農村関係の出現、大都市内の局地的コンパクト化、都市アメニティ空間などの現代的特徴や、AIやハイスペックのネットワークを活用した防災が必要になるといったスマートシティとデジタル田園都市国家構想について。そして最後に、ボトムアップからのヒューマン・シティの建設、人間性へのまなざしを忘れないことと地域生活機能の保全の大切さについての話になり、話題提供を締めくくられました。

減災と被災地復興の取り組みによる地域社会の再構築(共生学と宗教社会学の視点から)

稲場教授からは、減災と被災地復興の取り組みを通じたソーシャルキャピタルの醸成に触れられ、地域社会の再構築の重要性が示されました。

そして以下のような取組や課題についてお話をなさいました。災害時の施設混雑やインフラ稼働状況を伝える災救マップの展開。グローバルビレッジ・コミュニティ・プロジェクトの協働や防災を地域で進めていくこと。東日本大震災の際は、行政が用意した公民館などが使えなくなり、緊急避難所になった寺社が100カ所以上あり、そこで3か月間の避難所生活や、弔い、追悼などが行われたこと。宗教施設にはそういった支援を行う資源力や宗教力があること。行政内閣府の動き、ガイドラインについて、パブリックコメントでお寺神社の活用を明確にすべきこと。自治体の災害時の協力の事例としての東京都宗教連盟と東京都の取組。その他、寺社は古いから災害時に危険ではないかといったよく聞く声に対しても回答されました。

ディスカッション -防災と過疎化

ディスカッションでは最初、人々が人口減少しても住み続ける理由、主要産業が成り立たなくなった際の立て直し方について質問がありました。堤教授は、災害により人が移住せざるを得なくなった事例、人と人の繋がりが定住し続ける理由になることを話され、地元に由来するソーシャルキャピタルの活用や、地場産業と他業種参入を組み合わせた産業振興(林業にグリーンツーリズムを組み合わせるなど)を提案なさいました。

参加された皆様からは、高齢化などで公助がなければ成り立たない集落も多いが、公助が多すぎると自立しなくなるといった自助と公助のバランス、若い人のボランティアに頼り続けるわけにはいかないといったコミュニティ維持の持続可能性などの話がありました。これらに対し堤教授は、地域の自立性を広域的連携で支えるといった概念提示として、コミュニティだけではなくアソシエーションを活用するコミュニティのプラットフォーム化、尊厳に触れない程度でのコンパクト化、公益的なものは国など公的機関が支えることが大切であると述べられました。

ディスカッション -防災と宗教法人

続いて、行政と宗教法人組織の連携において必要なことは何かとの質問がありました。多様な宗派への考慮と平等性の観点から、当初必要と考えられていた宗教施設の建設を断念した千里ニュータウンの事例も質問に補足されました。稲場教授からは、計画段階から有識者が入り、超宗派で進めることで災害時連携が進むとのお答えがありました。また、地域資源として存在するお寺・神社は人為的に設置することが難しいこと、宗教法人と行政の連携は憲法解釈上問題ないこと、災害対策基本法による制度化の過程で高台の寺社に逃げ込む習慣が変化したことについてお話があり、日本防災士会、人間科学研究科、SSIの「災救マップを活用した災害時協力に関する協定」に関する話もありました。防災のための行政と寺社の連携については考えたことがなくとても参考になるとの反応が参加自治体の方々からありました。

ディスカッション -防災と連携

参加された自治体の方から、スマート化による職員数減少が災害時のマンパワー不足に繋がっている現状と、その解決手段として民間企業や個人との連携や、自治体同士の連携に関してもお話がありました。
災害時対策として、仮設住宅や移転をどうすべきかとの問いも投げかけられ、堤教授から、阪神淡路大震災の際に山陰地方の人口が増えていた事例から関西圏を飛び越えた広域連携が必要との話がありました。また参加された自治体の方からは、阪神淡路大震災の際に被災地が仮設住宅の必要量を把握できていなかったため、支援側で必要空間を想定した経緯があったことから、事前のシミュレーションが重要との話がありました。