地域・まちづくりフォーラム

第1回SSI地域・まちづくりフォーラム開催報告
2021年2月16日

<日時>  2021年2月16日(火)
<場所>  オンライン開催
<参加者> 22名(関西を中心に、13の自治体より)
<プログラム>
・開会挨拶 堂目卓生/大阪大学SSI長・同大学院経済学研究家教授
・講演 天米一志/Amame Associate Japan(株) 代表取締役
    「官民連携事業における新たな事業スキームと空間整備手法について」
・参加自治体の自己紹介と困りごとや課題の共有
    (モデレーター:木多道宏/工学研究家教授・SSI副長)

第1回SSI地域・まちづくりフォーラム開催概要

2021年2月16日(火)、オンラインにて、第1回SSI地域・まちづくりフォーラムが開催されました。関西を中心に、13の自治体から、22名の行政の方にご参加いただきました。本フォーラムでは、堂目SSI長による開会挨拶ののち、Amame Associate Japan(株) 代表取締役の天米一志氏より、「官民連携事業における新たな事業スキームと空間整備手法について」というテーマにてご講演いただきました。後半では、参加自治体の自己紹介と困りごとや課題の共有が行われ、木多SSI副長をモデレーターとし、「誰一人取り残さない」社会に対してパブリックセクターが目指すべき役割や、実務にあたっての困りごとなど自由なディスカッションが行われました。

官民連携の新たな手法

天米氏からは、官民連携によるまちづくりの方法について、近年のトレンドや事例を用いてご紹介いただきました。官民連携とは、民間の資金やノウハウを活用し、公共サービスの充実化を図る戦略であり、公益の実現・リスク分担(役割分担)・ともに作り上げるプロセスにその特徴があります。特に、官民連携事業を行なっていく上では、公益の実現と事業の質の追求を行う上で、官と民の共感にもとづいた適切な役割・リスク分担が重要になります。
近年の官民連携の傾向として、税財源主体ではなく、金融や資産活用・資産運用も視野に入れた連携が行われています。そこでは、ハード(建物)だけでなくソフト(サービス)やキャッシュフロー(ファイナンス)までを見据え、連携を考えていくことが重要であることが指摘されました。長期的な運用を考える上では、建設費だけでなくトータルのLCC(ライフサイクルコスト)を含めた運用のあり方を検討していく必要があります。そのためにも、プロジェクトの実務を行う上では、「施設整備のみが目的となっていないか」や「庁舎機能と複合化できないのか」のような、本質を見抜く「探究心」が、今後必要になってきます。
また、新しい形の公的不動産活用の事例として、地方公共団体の現物出資と民間企業の資本金の出資によって未利用地の活用を行うLABV方式の事業スキームもご紹介いただきました。今後も、様々な新しい形の公的不動産の有効活用や官民連携方法が生まれてくると考えられます。その際に、探究心を持って新たな提案を行っていくことが今後重要になってくると考えられます。

地域を支える場として

後半のディスカッションでは、各自治体の自己紹介の中で、それぞれの自治体の強みや弱み、課題が共有されました。天米氏は、どの自治体も強みを活かしきれておらず、また弱点を克服し切れていないと言える。しかし、強み・弱みが自治体によって様々であるように、それらを生かした課題解決の方法も個別的なものになる。既存制度や事例に頼るだけでなく、既成概念を外しながら、考えていく必要があると話されました。
また、そのような風土を育むためには人材や組織の育成も重要であり、推進力やチーム力のある組織の育成と、地域の企業や人々の個性もうまく取り込んだ組織づくりが重要になります。そのためにも、オフサイトのミーティングや勉強会といった活動を地域として支援し、持続させ、活用していくことが大切になります。ディスカッションではこの他にも、部署ごとに異なる課題意識をどうすり合わせていくかや、官・民がどのように役割を分担していくのかなど、活発に議論が行われました。
今回の地域・まちづくりフォーラムは、SSIの活動である場づくりの一つです。今回、様々な自治体がそれぞれ向き合っている課題について率直に議論できたことは、パブリックセクターが目指すべき役割とは何かについて考え、「誰一人とりのこさない」社会の実現に向けて重要な一歩を踏み出すことになったのではないでしょうか。天米氏のお話の中にもあったように、このような場を持続的に運営し、共感にもとづいたネットワークの形成と、探究心を持った活動をサポートしていく必要があると思います。多様な方々とともに地域を創っていくきっかけとして、今回の議論や活動が生かされることを期待しています。

(島田広之 社会ソリューションイニシアティブ特任研究員)