サロン/シンポジウム

第3回SSIシンポジウム開催報告
命に向き合う知のつながり-未来を構想する大学

<日時>  2021年3月16日(水)13時~18時
<場所>  Zoom ウェビナーにてオンライン開催
<参加者> 530名
<プログラム>
第1部 人文学・社会科学の可能性
・開会の辞 西尾章治郎/大阪大学総長
・来賓挨拶 杉野剛/文部科学省研究振興局長
・プロジェクトの概要説明 盛山和夫/東京大学名誉教授・事業総括者
・今年度の活動報告 堂目卓生/大阪大学SSI長・プロジェクトマネージャー
・講演「学問と社会 再論」 鷲田清一/大阪大学元総長・名誉教授

第2部 未来を切り拓く大学間共創ネットワークの構築に向けて
・事例紹介 堂目卓生/大阪大学SSI長
  出口康夫/京都大学人社未来形発信ユニット長
  田口 茂/北海道大学人間知X脳XAI研究教育センター長
  竹尚登/東京工業大学未来社会DESIGN機構副機構長
  小林信一/広島大学副学長
・パネルディスカッション
  堂目卓生、出口康夫、田口茂、小林信一、
  佐藤勲/東京工業大学未来社会DESIGN 機構長
  (モデレーター 井野瀬久美惠/甲南大学文学部教授)
・閉会の辞 三成賢次/大阪大学理事・副学長

第3回SSIシンポジウムを「学術知共創プロジェクト」と共催

2021年3月16日、第3回SSIシンポジウム「命に向き合う知のつながり-未来を構想する大学」は、社会が直面する諸問題の解決に向けた人文学・社会科学の新しい「学術知」の創出をめざす、文部科学省委託事業「人文学・社会科学を軸とした学術知共創プロジェクト」のキックオフ・シンポジウムと兼ねて、オンラインで開催されました。シンポジウムは、 SSIが目指す「命を大切にし、一人一人が輝く社会」の実現に向けて、学内外の多様な参加者との議論を通じて、その足掛かりを探求する重要なイベントです。第1部「人文学・社会科学の可能性」では、鷲田清一 大阪大学元総長・名誉教授より、基調講演「学問と社会 再論」が行われ、続いて、第2部「未来を切り拓く大学間共創ネットワークの構築に向けて」と題して、京都大学(出口康夫教授)、北海道大学(田口茂教授)、東京工業大学(大竹尚登教授)、広島大学(小林信一教授)、大阪大学(堂目卓生教授)より、5大学における共創の取組が紹介されました。続いて行われたパネルディスカッションでは、事例紹介を行ったスピーカーがパネリストとして登壇し(東京工業大学は佐藤勲教授が参加)、井野瀬久美惠 甲南大学文学部教授がモデレーターを務め、共創の場について様々な視座から議論を掘り下げました。直言を交えて大学と学問のあるべき姿を問う示唆に富んだ内容で、そこに込められた熱い想いに多くの参加者から共感が寄せられました。また、シンポジウムには、学内外より500名を超える皆様にご参加いただきました。

第1部「人文学・社会科学の可能性」 −講演「学問と社会 再論」鷲田清一/大阪大学元総長・名誉教授−

基調講演では「学問と社会 再論」と題して「現代の大学・学問に求められるものとは何か」が語られました。市民の信頼と「知性の公共的使用」についてとりあげ、「研究者が自分のために研究するのではなく、市民や社会が抱え込んだ問題を一緒に考えるということは、言い換えれば、研究者が自分の知性を自分の利益のために使っていないということ。それが研究者や大学への信頼の根っこにある」と示唆されました。また、「哲学者カントが、『知性は私的に使われてはならない、公共的に使われなければならない』と述べ、それを『理性の公共的使用』と呼んだ、そのような学問・研究者の姿勢が市民の信頼をもたらし維持する」と述べられました。鷲田元総長は、大阪大学副学長在任中、国立大学法人化の際に「学問と社会」について何度か論じたことがあり、その後も研究者生活を通してさらに深い問題意識をもってこのテーマと向き合ってこられ、それを踏まえて今回の講演では再び両者の関係に焦点を当て、本プロジェクトへの大きな期待を示されました。

第2部「未来を切り拓く大学間共創ネットワークの構築に向けて」

第二部では、前半に、上記5つの大学の社会との共創に向けた取組紹介があり、後半では、井野瀬久美惠 甲南大学文学部教授をモデレーターに、5名のパネリストの間で共創をテーマとしたディスカッションが行われました。ディスカッションでは、「共創の場とは何か」、「何のための共創か」、「どのように学問を社会に開くのか」について議論がなされました。議論では、共創とは、学者が「こうあるべき」と上から伝えることではなく、学問と社会とが共通の目標に向かって助け合って一緒に未来を紡いでいく場であるということ、また、あらかじめ決められた問題の解決策を練ることではなく、イシューそのものを一緒に探していくことである、といった意見が出されました。そうした中で、社会課題の解決に取り組むことは、無知をさらけ出したり、人を傷つけたり、知識が悪用されたりと失敗に直面することも多々あるが、重要なのは社会と関わり、責任を果たそうとする覚悟を研究者自身が持つことであると確認されました。

シンポジウムの詳しい記事はこちら

第1部「人文学・社会科学の可能性」
https://gakujututi.ssi.osaka-u.ac.jp/post/16.html

第2部「未来を切り拓く大学間共創ネットワークの構築に向けて」
https://gakujututi.ssi.osaka-u.ac.jp/post/17.html