サロン/シンポジウム

第2回SSIサロン開催報告
「科学技術と地域資源のコラボレーション」

<日時>  2018年7月18日(水)18時~21時30分
<場所>  大阪大学会館2F SSI豊中ラウンジ
<参加者> 36名
<プログラム>
・開会挨拶   堂目卓生/大阪大学SSI長、同 大学院経済学研究科 教授
・話題提供1 地域資源と防災・見守り
        稲場圭信/大阪大学大学院人間科学研究科教授、
        SSI基幹プロジェクト
        「地域資源とITによる減災・見守りシステムの構築」代表 
・話題提供2 国民の防災意識を超える防災対策はできない!
        幸田栄長/一般社団法人 全国自治会活動支援ネット理事長
・話題提供3 NTN社の技術とみまもりロボくん実験機
        石川浩二/NTN(株)執行役員
・話題提供4 深層学習を利用した野生動物検出通知システムの開発
        山田一憲/大阪大学大学院人間科学研究科講師
・ディスカッション
・「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」におけるSSIパネル出展報告
・閉会挨拶

参加者は新たなコミュニティ形成に関心を持つ産学民関係者

2018年7月18日、大阪大学豊中キャンパスのSSI豊中ラウンジにて、第2回SSIサロンが開催されました。前半は、SSI基幹プロジェクト「地域資源とITによる減災・見守りシステムの構築」メンバーからプロジェクトの具体的な取組が報告されました。6月18日の大阪府北部を震源とする地震および7月の豪雨に見舞われた直後のタイミングだったことに加え、プロジェクトメンバーがボランティア活動に関わったこれら被災地の様子も紹介されたことから、減災を進める上で日頃から支え合いの仕組みが不可欠だという指摘には非常に説得力がありました。それを受けて後半は、科学技術と地域資源のコラボレーションによる新たなコミュニティ形成について活発な意見交換がなされました。計36名の参加者の顔触れは、社会科学系研究者、情報科学系研究者、企業関係者、自治会関係者など、前回のサロンとはまた異なる広がりを持っており、多様かつ率直な発言が飛び交う非常に刺激的な議論の場となりました。

それぞれに思い描く“あるべき姿”を出し合って、これからの社会を共に構想する

議論の内容から推察するに、「旧来の自治会に代表されるような既存組織は岐路にさしかかっており、新たなコミュニティ形成や支え合いの仕組み作りが必要だ」「つながりを豊かにするためには『共感』がキーとなる」といった問題意識は、今回の参加者の間でおよそ共有されていたようです。しかし、例えば住宅メーカー関係者と自治会支援組織関係者、工学研究者、心理学研究者では、それぞれに望ましいと思うコミュニティ像や、その実現に向けた仕掛けについての考え方にかなり距離感があるように思えたのがとても印象的でした。「共感」がキーワードに挙がる場で、逆にその難しさが浮かび上がったと見ることもできそうですが、一方で、参加者同士の立場やこれまでの経験、専門性等の違いによって思い描く“あるべき姿”が異なるからこそ、SSIサロンという場が、お互い刺激を与え合い、これからの社会を共に構想するための第一歩になりうるのだろうとも感じました。

違いを超え共感やつながりを生み出す手段としてのICTの可能性

そんな中、情報科学研究者が、技術によって既存のつながりを補うのとは全く違う形で人の流れや集まるところを変えた事例として、ポケモンGOについてふれました。技術をうまく使えば、それを面白いと思う人たちの共感により想像できなかった出来事が生み出せるという、ICT(情報通信技術)の可能性についての発言でした。今回その具体的取組が紹介された「地域資源とITによる減災・見守りシステムの構築」プロジェクトも、ICTを用いてお寺や神社、学校、公民館、自治会組織等の地域資源をつなぐことにより、「防災」「見守り」「獣害」や「観光」といったテーマに関する情報ネットワークを構築・運用することを目指しています。対面でのコミュニケーションや顔の見える形での人と人とのつながりがコミュニティ形成に重要であることは言うまでもありませんが、そうした価値観に加えて、例えば楽しさや便利さといった人の気持ちをICTが媒介することにより、まだ私たちが知らない新しいつながりが生み出されていく未来に、今回のSSIサロンで思いを馳せることができました。

( 報告者:川人よし恵/大阪大学経営企画オフィスURA部門 )