活動レポート

【開催報告】第20回SSIサロン「「誰一人取り残さない」から「輝くいのち」へ ーポストSDGsに向けたアプローチ」

2026/06/02

 

2024年10月11日に第20回SSIサロン「『誰一人取り残さない』から『輝くいのち』へ―ポストSDGsに向けたアプローチ」(From “Leave No One Behind” to “Flourishing of Inochi (Life)”)をSSI豊中ラウンジとオンラインのハイブリッドで開催しました。

今回のサロンはAndrej Zwitter教授らオランダのグローニンゲン大学のメンバーの来日に合わせて、ポストSDGsにむけたアプローチについて検討する場として開催されました。今回のサロンは英語、ラウンジ・オンラインの両方に海外からも参加があるなど国際色豊かな環境で未来社会のあり方について議論がなされました。開会挨拶では堂目卓夫SSI長がSSIといのち会議の活動について紹介され、その活動が日本国内を越えて世界的なムーブメントになっていくためにも、今回のサロンに参加するZwitter教授ら海外の仲間との間でも議論を深め、共創ネットワークを世界中へと広げていかなければならないと述べられました。

最初の報告者としてグローニンゲン大学のAndrej Zwitter 教 授 か ら“Sustainable Development Goals: Buzzword or Blueprint for the Future?”のタイトルで講演が行われました。Zwitter教授は堂目SSI長らと共に“Meta Science”をテーマにした国際的な研究会を実46施しており、ポストSDGsにおいては、グローバルに社会課題に向けた原則を共有しつつ、ローカルなレベルで指標やパラメーターを設定しモニタリングしていくことで両者を結び付け、世界的な課題について地域レベルでの解決策を考え、実行していくことが重要だと述べられました。そのためには経済的な指標であるGDPを超えて、文化的・精神的な豊かさを測る新たな指標を設定することが不可欠であり、Meta Scienceグループで取り組んでいる人文社会科学的なアプローチがより重要になるだろうとして報告を締めくくられました。

2人目の報告者である京都大学の出口康夫教授が“Post-SDGs for What?”のタイトルで報告されました。出口先生はポストSDGsにおいては人間のみならず、あらゆる生命、さらには自然や人工物など生命を持たない地球上のあらゆる「モノ」の「いのち」について考慮されなければならないと最初に示されました。それは、「充実感fulfilment」と「一回性one-time-onlyness」の観点から、生命をもたない「モノ」も「脆弱vulnerability」で「希 少preciousness」な「いのち」であると考えられるからであり、人間や動物など生命活動を行う「いのち」と同様に様々な権利が守られているのか考慮される必要があると述べられました。

3人目の報告者としてグローニンゲン大学の Indira S.E. van der Zande准教授が “Inochi & Transformative Education”のタイトルで、いのち輝く未来社会の実現に向けた教育のあり方について報告されました。SDGsでも質の高い教育の普及が持続可能な未来社会の実現の鍵として重視されていますが、「いのち輝く」ポストSDGsの世界においては変容学 習(Transformative Education)が重要になると述べられました。個人と社会の間の繋がりを強化し、学習者が変化していくプロセスを体感できる変容教育を通じて、社会を変革する人材の育成を行うことが、「いのち輝く未来社会」に繋がると述べられました。4人目に大阪大学GIセンターのBrendan Barrett教授が“Rise of Ethical Urbanism”のタイトルで報告されました。Barrett先生は都市の倫理の問題について近年特に盛んに研究が行われ、欧州では住宅問題やシェアリング・エコノミーのあり方に大きな影響を与えている一方で、アジアでは都市化の急速な進展に対して、より多民族・多宗教が入り交じる都市部における倫理のフレームワークが十分に整備されていないことが指摘されました。だからこそ、いのち宣言のように「いのちの輝き」について考察することが人口の集中が進む都市のあり方にも良い影響が与えることが期待されると述べられました。

最後にグローニンゲン大学の大学院生のFriso Timmenga氏が “Theory and Practice of Inochi”のタイトルで報告を行いました。Timmenga氏は東洋思想における「いのち」の意味を整理した上で、いのちは様々な関係性(relationality)の中に存在すると示した上で、客観的(自然科学・生命科学)かつ主観的(人文・社会科学)なアプローチについて紹介されました。そして、西洋思想だけでなく東洋思想を参照しながら、身体と精神、科学と宗教、理論と実践の関係について再考・統合し、多様な人や文化の関係性の中で「いのち」のあり方を考えなければならないと述べられました。

ディスカッションのパートでは、最初に堂目SSI長より、「なぜ「いのち」の理念に立ち返って社会課題に挑むべきなのか」、「なぜ“Meta Science”のアプローチを採用するのか」という論点が示された上で、参加者も交えて白熱した議論が行われました。例えば、Zwitter先生が話された文化的・精神的豊かさを図る代替指標については、モニタリングの観点から市民もその責任の一端を担うことが重要だろうという意見があがりました。また、従来重視されてきた西洋中心的で、経済を変調した単線的な「成長growth」や「発展development」のパラダイムを超えて、「いのち輝く」という理念に基づく新たなパラダイムを確立しなければならないという見解が示され、SDGsの“development”の側面をどう考えるべきかについて非常に白熱した議論が繰り広げられました。それ以外にも、出口先生の説明された生命をもたない「モノ」にまで拡張された「いのち」の概念・権利をどう具体的に動物やAIなどに適用していけばいいのかなど、幅広い論点について話が繰り広げられました。

最後にZwitter先生が、今回のサロンが大阪大学とグローニンゲン大学、そして京都大学の間のネットワークが更に強固にする貴重な機会になったこと、今後もこのネットワークの上で活動を継続していきたいと締めくくりの挨拶がなされました。今回のサロンは、まさしく「共創ネットワーク」のグローバルな拡大にむけた大きな一歩であり、「いのち輝く」未来社会の実現に向けて今後もより多くの海外のパートナーとの間で議論を深めていければと思います。