基幹プロジェクト

地域ではぐくむこどもと未来:共創ネットワークの実践と理論
Nuturing children and future with local community: Practice and theory of the co-creation network

【 研究代表者 】上須 道徳 経済学研究科 教授

誰⼀⼈取り残さない社会、命輝く社会を地域で実現するためには地域の様々な関係者が協働の下でビジョンの構想および課題解決に取り組む、共創ネットワークの構築が求められます。本プロジェクトでは、地域、こども、未来をキーワードに、共創ネットワークの実践的取り組みを進め、そこから得られる経験や知⾒から共創ネットワークの理論を構築することを目的とします。

本プロジェクトの活動では、⼤阪府の自治体等の⾏政関係者、こども⾷堂(こどもの居場所)運営者などの中間⽀援者、企業が参画する「⼤阪府こども⾷堂⾃治体等連絡会」の実践を柱とします。こども⾷堂はコロナ禍において全国で急速に増加しています。こども⾷堂では被⽀援者のみならず⽀援者が交流を通じて共感しあう様⼦が各⽅⾯で報告され、多くの⾃治体や関係者もこども⾷堂の設⽴や運営を⽀援する動きがみられます。こども⾷堂やこどもの居場所は地域のだれもが参加し輝くことのできる場所であり、命を⼤切にし、⼀⼈⼀⼈が輝く社会の実現のためのコア・インフラとなりえます。そのためには、地域のステークホルダーが連携し、協⼒し共創ができるネットワークの構築がカギとなります。

本プロジェクトは、これまでにこども中間⽀援団体である「むすびえ」などと協⼒しながら、⼤阪府下の⾃治体部署や社会福祉協議会、中間⽀援組織やこども⾷堂運営者が参加する連絡会を開催し対話の場づくりを⾏い、ネットワークを形成してきました。この対話の場においてコアとなる組織を選定しネットワークを充実、展開するとともに、「共創ネットワーク」の理論化を目指します。

具体的には、連絡会の「共創ネットワーク」としての機能や役割、運営の持続性について模索しながら、地域のビジョン形成および課題の抽出・解決策の探求を、実際の研究調査を行い進めていきます。

 

本プロジェクトが想定する共創ネットワークの構造は、上図の通り、⼤阪府こども⾷堂⾃治体等連絡会と⼤学から成ります。ここでは、政策や⽀援の現場からの情報や声を共有し、地域のビジョンについての対話、課題のフレーミングや潜在的な解決法の探索を⾏います。また、ここで蓄積された情報や知⾒を府下の各地域の関係者に共有します。⼤学においては連絡会だけでなく、研究者や⼤学⽣の参加の調整を⾏う事務局と調査研究の役割を果たします。互いの連携により、情報共有、ビジョン実現や課題解決のための調査研究の企画、⼈⼿や情報、物資の融通の促進を図ります。

また、本プロジェクトでは、地域やこどもをキーワードに、ステークホルダーの共創ネットワークの構造や成果を基にしながらトランスディシプリナリー研究やアクションリサーチ、フューチャー・デザインなどにおける⾔説や実践を参照しながら共創ネットワークの理論を構築します。さらに、こうした学術成果や実践的取り組みについては積極的に社会に発信し、政策提⾔や新たな研究課題の発掘につながる研究を進めていきます。

すでに連絡会や⼤学の研究会では、1)こども食堂に関わることのwellbeingへの影響、2)こどもの声を可視化する方法、3)こどもの居場所を通じて地域の包摂(例えば高齢の男性の参加)を実現するための方法、を探求することが研究課題として挙げられています。本プロジェクトではこうした研究・実践的課題に取り組みながら、全国の地域社会にとってモデルとなるような共創ネットワークを形成したいと思います。

 

研究協力者
(学内)
渕上ゆかり 工学研究科助教
今井貴代子 社会ソリューションイニシアティブ特任助教
矢倉誠人 共創機構特任研究員
池田光穂 大阪大学名誉教授

(学外)
杉田菜穂 大阪公立大学大学院経済学研究科教授
湯浅誠 東京大学先端科学技術センター特任教授
松本文子 国立民族博物館機関研究員
松本みなみ 独立行政法人国際交流基金 バンコク日本文化センター職員

 

共同研究機関・連携機関
一般社団法人 高槻タウンスペースWAKWAK
社会福祉法人 堺市社会福祉協議会
大阪府こども食堂ネットワーク連絡会

研究キーワード
地域研究、持続可能なコミュニティ、ネットワーク、社会包摂、インパクト評価
社会課題
コミュニティへの参加・包摂、住み続けられるまち・コミュニティ、人々のWellbeing