マンスリー・トピックス

ごみゼロは地球を救う。いのちをまもるための 持続可能な世界への仕組みづくりが必要、 そのためには地球人としての共感が不可欠。 身近なごみ削減の成功は大きなヒント。

公益財団法人地球環境センター(元大阪市環境局)
北辻卓也

2024年11月
地球の危機—プラネタリーバウンダリー—

 2015年に策定されたパリ協定では、地球の生態系を守るために「気温上昇を1.5℃にとどめる努力を追求する」と目標が設定されました。
 しかし、下記に示すように世界人口は産業革命以降驚異的な爆発的増加傾向にあり、また、一人当たりのCO2排出量も途上国を中心に先進国並みに今後10倍近く増える可能性もあるなどまさしく地球はプラネタリーバウンダリーにあると言われています。
 2024年の世界平均気温も観測史上最高になる見通しで、現状は1.5℃目標と乖離があり、2024年11月に開催されたCOP29においてもパリ協定は大きな危機に瀕しているという警告が出されるなど、各国のGHG 削減対策の強化が求められています。本当に1.5℃目標は達成できるのでしょうか。

ごみ減量の成功事例

 ここで一つ印象的なグラフを示します。
 このグラフは大阪市のごみ量の推移を示すもので、以下の二つのことが読みとれます。
 ❶戦後、大量消費・大量廃棄の生活に変化したことによって、ごみ量は1955年(昭和30年)代の40万トンレベルから1991年(平成3年)の220万トンへ5倍に増えた。
 ❷しかし、その時期をピークとして現在は60%減の90万トンレベルまで減った。
 ❶について言えば、高度成長期までの日本人はサーキュラーな生活を送っていました。例えば、食べ残しは鶏や家畜の餌として再利用したり、豆腐は手鍋持参で買っていました。
 ❷については、「やればできる」という驚きがあります。大阪市内のごみ焼却工場も10工場から6工場へと減り、ピーク時から累計で1500億円超のコストが節減されました。まさしく環境と経済の統合です。
 それでは、❷を可能にしたものは何でしょうか。それはごみの分別であり、それを実現した地域コミュニティの共感です。
 ごみの減量については排出者である各家庭の協力が不可欠ですが、大阪市では、ごみ減量についての地域コミュニティの役割が大きく、町会にはごみゼロリーダーという役員さんがいて、ごみの減量について行政との連携や地域内での家庭への啓発、取りまとめなどを進めて頂いています。
 特徴的な2つの取組みをご紹介します。
・古紙衣類コミュニティ回収
(大阪市:コミュニティ回収について https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000288460.html)
・みんなでつなげるペットボトル資源プロジェクト
(大阪市:みんなでつなげるペットボトル循環プロジェクト(新たなペットボトル回収・リサイクルシステム)について https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000480794.html)
 こうした取組では、ごみとして出していた古紙を種類毎に整理することやペットボトルのシールを剥がし、水洗い等、一手間加えることで価値ある資源に変え、得られた報酬を独居老人の見守りや子ども食堂など、地域福祉活動の一助にあてています。日々の生活の中で、自分事として共感を持って実践されているこうした行動は、SDGsが目指す環境・経済・社会の統合を示している一例といえるでしょう。
 また、2020年にスタートしたレジ袋有料化も、ウミガメや海鳥被害が映像化され、国民に共感が広がる中で始められたもので、有料化の効果もあり、エコバッグを持参する人も大幅に増えました。もちろんレジ袋の流通量削減効果もですが同時にプラスチック汚染に対する啓発効果も大きいと思います。こうした成功例を見るとゼロウェイストや1.5℃目標達成に向けて希望が湧いてきます。

持続可能な世界への仕組みづくり

 ごみ減量という環境にやさしい取り組みが地域コミュニティのお財布にもやさしく、社会の福祉活動を支えるとともに、ごみの焼却工場の減や収集コストの低減など自治体の財政にもやさしい。また、レジ袋削減ではマイバッグ持参という環境にやさしい取り組みが、家庭のお財布にもやさしいというように、SDGs の環境と経済と社会の統合を実践しながらごみ減量の取組が進められています。
 このように環境問題を考える時には、一人一人の行動に結びつける外部経済(外部不経済減少)の内部化の仕組(環境に優しいことが個人の財布や会社の財政にとって優しいこと)と、それを後押しし可能にする社会の共感が不可欠です。
 環境問題に伴う外部不経済の内部化の一例としては、公害に対して加害企業が被害者に賠償するなどを市場外で行うものがあります。そしてこれまでの外部不経済の内部化の多くの事例は環境は企業の経済活動にとってコストを伴う、即ち企業のお財布にやさしくないもの(環境と経済の背反)として捉えられるものでした。
 しかし、我々が直面している地球温暖化やプラスチック汚染など地球環境問題は全人類が被害者であると同時に加害者でもあります。
 すなわち、特定の加害者が明確にされにくく被害額の加害者への転嫁も難しいことから、環境にやさしい=個人や企業、政府の経済、財政にメリットがあるという仕組づくりが必要であり、こうした視点でのルール化や外部(不)経済(減少)の内部化の仕組みが、COP 等国際社会の場を含めて議論され取り組まれています。
 例えば、ESG 投資の企業評価、株価への反映やビジネスにおけるCO2削減、アップル、マイクロソフトなど巨大グローバル企業のサプライチェーン全体におけるCO2ゼロ宣言、RE100、SBT 認定、CO2削減のクレジット市場創設など地球環境にやさしい取り組みが企業活動、経済にプラスになるSDGs の経済と環境の統合のためのルールや取り組みが世界的潮流として進められています。
 環境と経済の統合の事例は、このほかにも家庭でLEDに変えて電気代が助かった。国で言うと2012年に導入された温暖化対策税や炭素税導入によるCO2削減インセンティブなど多くを上げることができます。
 そして、こうした仕組みづくりを進め、人々や企業の行動につなげるために基本となるのは、ごみ減量の事例でも見てきたように、社会全体、世界全体での機運醸成と、そのための我々一人一人の共感と行動です。

共感とアイデンティティ

 共感(Identify with)とは、自分自身を他者やある事象と同一視する、感情や経験、価値観などを共有することから、他者との強い結びつきを表現するのに用いられ(Weblio 辞書)、アイデンティティとは自分が何者であり、何をなすべきかということに関する概念(心理学者エリクソン氏)だと言われています。
 したがって、人々が、何に共感し、どのように行動するかは、このアイデンティティ(自分が何者か)によるということになります。
 自己が何者であるかということを考える時に、いちばんわかりやすいのは、自己と他者に境界を設け区分することであり、この境界によって、自分のものと他人のものを分けると排他的になります。わかりやすいのが土地境界や領海侵犯などです。
 ところが、この境を、ぐるっと回して、繋げてしまう、境を環く(環境)捉えるとどうなるでしょう。
 環境とは環(わ)になった境(さかい)という意味です。直線により区分された境は他者とは交わることはありませんが、環になった境であれば、境の内部は全体の一部です。つまり、自己とは〇〇家の一員であり、地域コミュニティや会社の一員、〇〇国の国民であり、そして地球人であり、いのちの連鎖の一部なのです。アイデンティティは同心円の様に限りなく広がり、多様で重層的になっていきます。
 このように環境を考えることは自己を多様な全体の一部として共感を持って包摂的に認識することだと思います。

環境曼荼羅―我々人類とは?ー

 
 多くの歴史上の先哲が述べられているように我々自身の「いのち」はひとりひとりにとって次元を超えてアブリオリ的に絶対的なものであると思いますが、この4次元時空という世界で見ると、全ての万物(質量)は、万有引力ケプラーの法則による循環(サークル)として存在し、この地球という星と太陽とのまさしく奇跡の距離による公転運動や自転こそが我々人類をはじめとする生命を誕生させました。
 上図は、この星のそうした奇跡により、自転と公転のなかで水の循環が生まれ、それが長い年月の変化の中で生物を誕生進化させ我々人類が生まれたことを表しているいわゆる環境曼荼羅図です。
 そして、我々人類自身が140億年の経過の中で形成されたCO2(生物のエネルギー源であるデンプン)や窒素(生物の生成要素であるタンパク質)など物質循環の一形態であり、生態系、地球の一部としての存在であることを表しています。
 それが、今人類の人為的活動により、地中にとどまっていた化石燃料(石炭や石油)が燃焼、大気へ放出され地球温暖化の問題を引き起こし、最近問題となった有機窒素化合物PFAS などここ100年程度で約10万種類創り出されたとも言われる人工化学物質やマイクロプラスチック、化学農薬などによる環境汚染が食物連鎖の物質循環に入り込み、生態系の破壊が空間的、時間的に拡大しています。そして地球上の生態系、生物濃縮の最上位にある万物の霊長たる人間のいのちこそが最も脆弱な存在として環境汚染、環境破壊等の影響を受ける事態となっているのです。

人類の進歩と持続可能性のための共感

 人類の飽くなき進歩への欲望は、様々な科学技術を生み出すことによって物質的な生活水準を高める一方、大量生産、大量消費、大量廃棄の社会を生み出し、核、AI、遺伝子操作、化学物質など影響力を飛躍的に拡大させ今や生態系や人類の持続可能性を脅かす力を持つようになりました。地球温暖化やプラスチック汚染などの地球環境問題はその現れのひとつです。
 この地球的危機を克服するアイデンティティは他者否定のエゴではなく地球人としての共感であると思います。
 一人一人が狭量なエゴを抑え、地球人として多様な他者、自然を含めた地球上のすべての「いのち」生態系に対する共感を通じて行動することが重要です。

SDGs、持続可能な開発目標

 科学技術の進展により物的資源、自然に働きかけて生産する能力やその活動範囲は飛躍的に拡大し、人間の欲望を満たす一方、同時に、科学技術の急速かつ無制限の進歩は、人類の持続可能性を含めた環境破壊の危機(地球温暖化、化学物質、核、バイオサイエンスなど)を招くだけでなく、技術や情報の高度化による専門化、分業化の進展による疎外の進展(人間の歯車化)、社会の分断を引き起こし、われわれの人としての能力についても感性や実感力の低下、思考停止、根拠のない安心感、社会性の欠如、排他的エゴイズムなど人間力の低下と世界における悲惨な現象として表れています。
 人類は滅亡の危機から自らを救うためには、高度に発達した人間(個)の自然(全)への働きかけ能力(科学、技術)に対し、地球環境や持続可能性への反作用、影響を踏まえた対応、すなわち下部構造(科学技術の発展)が上部構造(社会システムや文化、人類社会の持続可能性など)へ及ぼす影響を踏まえたうえで、逆に上部から下部へのコントロールまさしく、持続可能な開発目標(SDGs)をしっかりと見据えることが必要となっています。
 そしてそのためには、人間の脆弱さ(自然界の一部たる生物学的弱さ等)を認識し弱さゆえに共生する地球人類、生態系の一部としての共感意識が不可欠であると思います。

地球環境センターといのち会議との連携

 現在、我々のいのち、生態系を脅かす危機、地球温暖化、様々な汚染、国際紛争、核など、地球的危機が大きくなっているなか、地球人(地球におけるいのちの一部)としての共感とアイデンティティを持つひとりひとりの連帯とその権能の強化が求められており、そのためにも国連等を中心とする多国間連携や国際協力活動の重要性が高まっています。
 いのち会議の協力団体である公益財団法人地球環境センター(GEC)は、地球環境について世界の人々と連携することをミッションとし、国連、国、自治体、大学、企業とのネットワークを持ち、諸外国と連携しつつ、2050年までにサーキュラーで持続可能な社会を実現することを目指しています。
 特に、日本においては、先に見たごみ減量の取り組みをはじめ、自治体、企業など、日々頭を悩まし考えたなかで、様々な取り組みや技術開発、ルールや仕組みづくりなどを進めてきており、これから経済社会を発展させようとしている途上国にこうした環境改善の知見を共有し環境負荷をいわゆるリープフロッグさせることは地球、人類社会の持続可能性を維持し続けるために非常に重要であると考えています。
 GECはいのち会議と連携しながら、毎年、プラスチックごみ対策やゼロウェイスト、カーボンニュートラルを目指した国内における先行的な取り組みを共有化することで意識啓発や共感の涵養を積極的に推進します。
 また、これから経済発展しようとする海外諸国のステークホルダーと連携の場を毎年設け、そうした先行的な国内事例や知見を共有することで世界全体の取組み推進に貢献します。