協力プロジェクト

大阪関西国際芸術祭を通じた大阪・関西地域の持続可能な成長戦略の実現
Achieving a Sustainable Growth Strategy for the Osaka-Kansai Region through the Osaka Kansai International Art Festival

【 研究代表者 】鈴木大輔 株式会社アートローグ 代表取締役CEO/社会ソリューションイニシアティブ 招へい研究員

現代社会において、地域の成長と発展は経済的な要因だけでなく、社会的・文化的な要素を含む多角的な視点から検討する必要がある。日本国内でも有数の経済圏である大阪・関西地域は、近代までは「上方」とも呼ばれ文化芸術の発祥の地として発展すると共に、商業・工業の中心地としても繁栄し、多様な文化が交差する独自の歴史と特徴を有している。さらに、近年は世界経済のグローバル化に伴い、多様な国際的交流とイノベーションの拠点としての役割を強化している。

一方で、世界に目を向けると日本は国民一人あたりの文化出額は922円(2019年)であり、フランス6,784円、韓国5,842円、英国3,806円などと比べても非常に低額である。美術品市場規模は約900億円と世界の美術品市場約9兆円の1%程度しかなく、十分に文化芸術の力を活かせておらず、そのための政策が実施られていない。
また、地域社会が直面する課題も複雑化・多様化している。地方の少子高齢化の進行により労働力不足が深刻化する中、若者層の流出、観光産業の競争激化、地域コミュニティの希薄化など、多岐にわたる問題が浮上している。特にアーティストやクリエイティブクラス、文化芸術事業従事者の人材の東京一極集中が顕著である。
これらの課題に対して、文化・芸術が果たす役割は、コミュニティの再活性化、新たな価値の創造、異なる背景を持つ人々との交流を通じた共生社会の実現など、多様な側面で期待されている。

このような背景から、2025年に予定されている「大阪関西国際芸術祭」は、大阪・関西の持続可能な成長戦略を考える上で重要な機会となる。国際芸術祭は、国内外のアーティスト、企業、地域住民が一堂に会し、地域の魅力を再発見・再創造する場として機能するだけでなく、新たな文化産業や観光の促進、地域ブランドの向上、国際的な評価の獲得など、多くの可能性を秘めている。

大阪関西国際芸術祭を通じて、地域の持続可能な成長戦略の実現を目指す研究プロジェクトを立ち上げ、本芸術祭を起点とした大阪・関西地域のポテンシャルの向上と、長期的な成長戦略の実現に向けて、多様なステークホルダーと連携し、持続可能な成長のための具体的なアクションプラン策定を目指す。

具体的には、定量・定性調査やフィールドワークを通じて、芸術祭の経済効果や社会的影響を分析するだけでなく、他地域や国での事例研究によりベストプラクティスを抽出し、地域コミュニティ、企業、自治体、アーティストが連携して共生社会の実現を図る。また、学生や若手クリエイターの参加を促進し、次世代の人材育成とネットワークの強化を図る。

このプロジェクトでは、地域のブランド力を向上させるとともに、観光や関連ビジネスの活性化、社会課題の解決に資する持続可能な成長戦略を提言する。大阪・関西地域が「文化と経済の融合」を体現する地域として国内外に認知されることで、地域全体の経済効果の拡大や社会的インパクトの増大が期待される。プロジェクトを通じて得られた知見は、政策提言やアクションプランとして具現化され、大阪関西国際芸術祭の成功に貢献するとともに、地域の未来への持続可能な成長戦略の一助となることが期待される。

 

研究協力者(学内)
鈴木大輔(社会ソリューションイニシアティブ招へい研究員)
堂目卓生(経済学研究科教授、SSI長)
伊藤武志(社会ソリューションイニシアティブ教授)
松本文子(建築・都市デザイン学講座 特任講師)

研究協力者(学外)
山極壽一(総合地球環境学研究所所長)
ウスビ・サコ(京都精華大学人間環境デザインプログラム教授)
山本俊一郎(大阪経済大学学長)
渡邊剛(喜界島サンゴ礁科学研究所理事長)

共同研究機関(自治体等を含む)・連携機関
一般社団法人関西経済同友会
大阪市北区
大阪市中央区
大阪市西成区役所
大阪商工会議所
大阪府・大阪市
一般社団法人 関西領事団
公益社団法人関西経済連合会
公益財団法人大阪観光局
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会

研究キーワード
アート、持続可能な成長戦略、国際芸術祭、地域ブランディング、地域活性化、文化芸術経済、共生社会、地域コミュニティ、多文化共生、国際交流、イノベーション、社会的インパクト、次世代人材育成、ネットワーキング、産学官民連携
社会課題
少子高齢化、労働力不足、若者の地域離れ、地域コミュニティの希薄化、多文化共生の推進、インバウンド観光の強化、地域ブランドの低下、地域経済の停滞、アートと文化産業の育成、地域産業のグローバル化、イノベーションの創出、女性の社会進出促進、貧困や格差の是正、持続可能な観光開発、クリエイティブ人材の育成、企業の社会的責任(CSR)、持続可能なまちづくり、地域資源の有効活用、環境問題とSDGs