SSIサロン / シンポジウム

第1回SSIシンポジウム開催報告
「未来につなぐ命~SSIの理念と取組~」

<日時>  2019年3月19日(火)15時~20時30分
<場所>  大阪大学会館講堂、アセンブリー・ホール
<参加者> シンポジウム276名、懇親会159名
<プログラム>
第一部
・挨拶   西尾 章治郎/大阪大学総長
・基調講演 堂目卓生/大阪大学SSI長・大学院経済学研究科教授
 「命を大切にし、一人一人が輝く社会を目指して―大阪大学のチャレンジ―」
・パネルディスカッション 「社会課題の解決を通じて見える未来社会」
 パネリスト
 稲場 圭信 大阪大学大学院人間科学研究科教授
  テーマ「災害時の新たな支え合い:地域資源(寺社・自治会)×科学技術」
 大竹 文雄 大阪大学大学院経済学研究科教授
  テーマ「エビデンスに基づく政策形成」
 長 有紀枝 立教大学21世紀社会デザイン研究科・社会学部教授
  テーマ「難民の世紀に生きる私たちの視点」
 開(比嘉) 梨香 株式会社カルティベイト代表取締役社長
  テーマ「今こそ求められる離島の潜在力」
 モデレーター: 栗本 英世 大阪大学SSI副長・大学院人間科学研究科教授
第二部
・懇親会

学内外の多くの参加者が一同に集ったSSI初年度の集大成

2019年3月19日、大阪大学会館講堂、アセンブリー・ホールにて、第1回SSIシンポジウム「未来につなぐ命~SSIの理念と取組み~」が開催されました。2018年1月に発足、4月より本格的に活動を開始したSSIにとって、本シンポジウムは自らの理念、そして一年目の活動を振り返り、紹介するとともに、学内外の多くの参加者との議論を通じてSSIが目指す「一人一人が輝く社会」の構築に向けた足がかりを築く重要なイベントです。

第一部シンポジウムの前半は、西尾総長の挨拶の後、堂目SSI長によるSSIの理念と取組の紹介と、4名のパネリストによる個々の活動の紹介がなされました。後半では、4名のパネリストにモデレーターとして栗本SSI副長をくわえ、持続可能な共生社会の実現に向けた白熱した議論が行なわれました。

また、当日は学内のみならず、学外から276名の方にご参加いただきました。幅広いバックグラウンドをもつ登壇者・参加者がいかなる共生社会を、いかに築くことができるのかという共通の目的・関心の元で白熱した議論を繰り広げることで、広く社会との共創を通じて社会課題の解決・持続可能な競争社会の実現を目指すSSIの理念を体現した刺激的な場となったといえるのではないでしょうか。

SSIの理念と社会課題に向き合う真摯な取組み

シンポジウム前半では、堂目SSI長による基調講演、4人のパネリストによる話題提供を通じて、目指すべき未来社会を構想するための論点が提示されました。

基調講演において堂目先生は、3人の経済学者(アダム・スミス、J.S.ミル、アマティア・セン)が構想した社会像について説明した上で、弱者を中心に社会を構想するジャン・バニエの考えを紹介しました。SSIが目指す「命を大切にして、一人一人が輝く社会」を実現するためには、バニエ流の発想の転換(「強い人」「優れた人」中心から「弱者」中心の社会構想へ)が重要なポイントであり、船底にいくつもの穴が空いている船に例えられる現代の世界の課題を解決するためには、穴を塞ぐために船底に向かう仲間を作り、共に行動することが重要であると訴えました。目指すべき社会を構想し、仲間を作り、実験し、行動するための場としてSSIが機能しのうしなければならないという堂目先生のメッセージは多くの聴衆の心に届いたのではないでしょうか。

そして、基調講演に続いて、4人のパネリストから現在取り組まれている活動について紹介が成されました。話題提供を頂いたパネリスト4名は、SSI基幹プロジェクトのプロジェクトリーダー2名(大竹・稲場)にくわえ、学外で精力的な活動を行なわれている研究者・実践者(長・開)の2名という構成でした。

1人目の大竹先生は、SSIで取り組まれている2つのプロジェクト(教育の効果測定研究・健康医療の行動経済学研究)について紹介されました。大竹先生は堂目先生と同じ経済学者の立場から基調講演へのコメントとして競争社会において利他心や互恵性が育まれることの重要性に触れた上で、教育や医療現場で課題を解決するためにはエビデンスに基づいた政策や取組の有効性の検証が必要であると主張されました。

2人目の稲場先生も、SSIのプロジェクト(地域資源とITの活用による減災・見守りシステムの構築)について紹介されました。稲場先生は利他主義と宗教の関係性、特に「無自覚の宗教性」について触れた上で、災害時における宗教設備の活用や行政と宗教団体の連携、そしてIT技術の活用によるシステムの構築の現状を紹介され、大きな変化に共生社会の構築のためには共通価値を創出することの重要性が論じられました。

SSIのプロジェクトリーダー2人の講演に続いて、立教大学の長先生から難民問題の国際的な現状が紹介されました。長先生は、難民問題における受入れ側の難民に対する認識のギャップや日本における難民受入の課題を指摘した上で、他者に対する無関心や想像力の欠如など難民問題が問いかけることに向き合っていかなければならないだろうと訴えかけられました。

最後に株式会社カルティベイト代表取締役社長の開氏から、沖縄の離島におけるエコツーリズムの実践について紹介されました。子どもたちが抱えている問題と離島地域が抱えている問題を掛け合わせ考える中で開発・運営されてきた離島体験交流促進事業を通じて、離島の生活と子どもたちの両方に変化してきた様子が説明されました。

4名の話題提供は取り扱っているテーマは違えど、いずれも他者に共感する力の重要性を訴える点では共通しており、各自が真摯に取り組まれていることが伝わるだけでなく、後半のディスカッションが実り多き物になるのではないかという期待が高まる内容だったと思います。

未来社会を構想する上でのポイント

シンポジウム後半では、4人のパネリストにファシリテーターの栗本SSI副長がくわわり、栗本先生から示された具体的な論点、「未来社会を構想する上でのビジョンに対する議論の不足」、「失われつつある共感や利他性の力を社会の中でどう広げていくことができるのか」、「自分とは違う他者に対する想像力・理解力や弱者の立場に立って考える事の重要性」に沿って、白熱した議論が展開されました。

未来社会を構想する上で必要とされる力が現代社会、特にAIなど先端技術の発展などとともに失われてきているのか、それともこれまでは必要とされなかったのが顕在化してきただけなのかと認識の違いも見られた一方で、日常的な教育、非日常な体験の両方を通じて、「利他主義のsustainability」を確保・涵養していくことが重要なのではないかという点では議論が一致したように思います。最後にはフロアからも熱心な質問がなされましたが、そのやりとりの中でもあったように、強制するのではなく、共通価値を共有できる仲間の話を少しずつ広げていくことの重要性がパネルディスカッションを通じて全ての参加者に伝わったといえるのではないでしょうか。

白熱した議論によって3時間のシンポジウムは瞬く間に終わりを迎えましたが、その後は会場を移し、懇親会が行なわれました。懇親会では、大阪大学OGの吉岡邑玲様ほか3名による素晴らしい弦楽四重奏、またシンポジウムをご後援頂いた3公益財団法人のうち、稲盛財団、サントリー文化財団より、SSIのこれからの取組みへの期待を込めたメッセージを頂きました。学内外の研究者のみならず、企業や自治体、NPOなど多様な背景をもった参加者が活発に会話を交わすことで、共創による持続可能な未来社会の実現に向けた交流の輪がさらに広がるきっかけとなったのではないでしょうか。

SSI初年度の集大成となった今回のシンポジウムを通じて、SSIに対する期待の高さを感じること出来ました。SSIの理念に共感する仲間の輪を広げ、「命を大切にし、一人一人が輝く社会」の実現に近づくように、2年目以降も学内外の多くの皆様と一緒に取り組める活動を展開して行きたいと思います。