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土岐 博 TOKI Hiroshi
大阪大学 核物理研究センター 名誉教授 / SSI基幹プロジェクトメンバー

プロフィール

大阪大学大学院理学研究科物理学科博士課程修了(理学博士)専門は原子核物理理論研究。博士号習得後、西ドイツで6年間ポストドクター、客員助教授、アメリカで3年間助教授として研究教育を行った。帰国後、東京都立大学、大阪大学で研究教育を行った。6年間核物理研究センター長として、国立大学法人化や大学経営にも携わった。定年後、原子核物理研究に加えて、社会貢献に理論物理の能力を生かしたいと思い、認知症の問題、放射線の生態影響や福島の甲状腺がんスクリーニングの問題などを研究している。さらに医療費・介護費の半減を目指して、大阪国保データの分析を行っている。

自己紹介

数学・物理大好き人間、中学の時にレンズを教えてもらい、簡単なルールでレンズを通過する光路を描くだけで答えがわかる。こんな簡単なことで顕微鏡や望遠鏡ができる。すごいと思って物理の研究者になることに決めた。その後はずっと卓球ばかりに時間を使った。とにかく運動が好きで、物理が好きで好きなこと以外はやりたくない。現役時代はそうも言ってられなかったが、退職後は本当に好きなことばかりに時間を使っている。今ではネットを見ればなんでもわかる、本当にすごい時代だ。

研究紹介
原子核物理は日本人が基礎を作った。粒子間に働く力(核力)は湯川、陽子などの素粒子の質量とその間の相互作用は南部が解明した。基礎はできたが、その力学を解いて原子核を記述するのが難しい。若い研究者と一緒に原子核を作りたい。認知症の勉強から始まった大阪国保データ分析では医療費半減と病気を予測するAI(人工知能)を作る。ノイズレス社会を作りたい。まずは電線の地中化で空間を綺麗にし、電気回路、コンピュータからノイズを削減する。そのための会社も立ち上げた。

私の取組み・プロジェクト

テーマ
(社会貢献)医療費半減シナリオと健康AIプロジェクト、電磁ノイズの削減プロジェクト
対象としている社会的課題
医療費半減は日本社会の健全化のために必要な課題。政策と個人の自律でこれを実現する。ノイズレス社会は技術はあるので必ず実現する。促進のために技術者の教育と実機の製作する。
目的とアクション
医療費削減には理論製作、現実分析、技術開発を継続的に行う必要がある。持続性のためには研究と教育の基盤を持つ必要がある。そのために寄付講座を作り研究と教育を行う準備中である。ノイズレス社会の早期実現のために会社「ノイズレス」を立ち上げた。電気回路におけるノイズ発生メカニズムを教育する。現在の電気回路の問題点を数値計算しその定量化を行う。ノイズを削減した電気回路の開発を行い社会に実装する。多くの企業を巻き込んでいきたい。

SSIについてのメッセージ・感想

社会貢献として文科省のEDGEプロジェクトの元に「認知症横断プロジェクト」を3年間走らせた。次のステップとして社会への実装が必要であり、最初はSSIに協力研究プロジェクトとして、昨年度からは基幹研究プロジェクトとして活動を始めることができた。受け入れてもらったことに心から感謝している。それとともにSSIの一員として社会の問題を根本から解決していきたいと思っている。多くの魅力的なプロジェクトが並走しており、大阪大学が地域・社会のThinkTankとして機能する基盤となっている。長年、基礎物理の分野で自然探究のみに専念してきた私にとっては、実社会の接点で仕事をされている人たちに驚かされることが多々ある。安心・安全な社会は科学だけでは到達できない。人の心の理解と社会の成り立ちの力学をきっちりと把握する必要がある。SSIはそのプラットフォームになっていると思う。自然科学者である私はとにかく事実を定量的に出すことに専念する。