さまざまな場

SSI基幹プロジェクト・キックオフシンポジウム
「アフリカの『いのち』に寄り添い、学び、共に生きること」開催報告
 

 

 

第一部
<日時>  10月11日(金) 15:00~17:30
<場所>  大阪大学豊中キャンパス国際公共政策研究科棟2階「OSIPP講義シアター」
<プログラム>
・開会挨拶 : 堂目 卓生教授 SSI長/経済学研究科
・SSIの理念と取組み : SSI長・経済学研究科 教授 堂目卓生
・基調講演 : 岡村 善文氏 国際平和貢献担当日本政府代表、アフリカ開発会議(TICAD)担当大使
「日本人だから,アフリカの扉が開く-社会・文化の共感」
・報告1 : 木多 道宏教授 SSI企画調整室長/工学研究科 「アフリカ・ガーナにおけるコミュニティの自律と継承」
・報告2 : HAWKINS, Virgil 准教授 国際公共政策研究科 「アフリカとの貿易:よりフェアな関係へ」
・パネル・ディスカッション(モデレーター:栗本英世教授 SSI副長/人間科学研究科)

第二部

・懇親会 (大阪大学会館SSI豊中ラウンジ) 18:00~20:00

主催 大阪大学社会ソリューションイニシアティブ (SSI基幹プロジェクト:アフリカの非正規市街地をフィールドとした持続型都市社会モデルの構築)
共催 大阪大学大学院国際公共政策研究科
後援 JICA関西

アフリカと共に未来社会を構想する、7つ目の基幹プロジェクト開始へ

2019年10月11日(金)、SSIの協⼒プロジェクトを経て7つ⽬の基幹プロジェクトとなった「アフリカの⾮正規市街地をフィールドとした持続型都市社会モデルの構築」(プロジェクトリーダー:⽊多道宏教授)のキックオフ シンポジウムとして、岡村善⽂⼤使をお迎えし、「アフリカの『いのち』に寄り添い、学び、共に⽣きること」 のテーマで公開講演会を開催しました。 学内外の研究者、⼤学院⽣・学部⽣、企業や⾮営利組織、⾏政のみなさまをはじめ、アフリカに関⼼のある多くの⽅々にお越しいただき、基調講演や報告、これらを踏まえた上でのパネルディスカッションが⾏われました。 アフリカには⼈の⽣き⽅、共⽣のあり⽅を考えるための⼿がかりがあり、講演会においてそれを参加者の皆様と共有することにより、未来社会を構想するための機会となりました。

岡村善文大使「日本人だから,アフリカの扉が開く-社会・文化の共感」講演

SSI長である堂目卓夫教授から開会の挨拶とSSIの理念や取り組みについての解説のあと、基調講演がはじまりました。基調講演者は、国際平和貢献担当日本政府代表やアフリカ開発会議(TICAD)担当大使を勤める岡村善文氏で、「日本人だから, アフリカの扉が開く-社会・文化の共感」と題した講演です。
アフリカ外交における比較的中立性のある立場といった政治的観点に留まらず、日本とアフリカの共通点を社会や文化、価値観などの視点から解説しました。駐コートジボワール特命全権大使などを勤めた際の岡村大使ご自身の体験を踏まえ、アフリカに対する誤解がいくつもあることに触れ、紛争などの様々な現象における本質は何か、アフリカ現地に内在する伝統的文化は何か、についても話しました。例えばある村の首長の心を汲み取るかたちで側近が村の統治を行うことで権威と権力を分離した統治を行っていること、紛争が国際支援をもらうためのパフォーマンスに興じている側面など、具体的な話を交えた解説がなされました。

木多道宏教授「アフリカ・ガーナにおけるコミュニティの自律と継承」報告

SSI企画調整室長を勤める木多道宏 工学研究科教授が、ご自身が担当する基幹プロジェクト「アフリカの非正規市街地をフィールドとした持続型都市社会モデルの構築」のキックオフを踏まえて、「アフリカ・ガーナにおけるコミュニティの自律と継承」と題した報告を行いました。
ガーナの首都アクラに周辺都市から移民難民が流入してきたこともあり、現在アクラには82か所の非正規市街地が形成されており、アクラ市人口の約60%が居住しています。その中には貧困、火災、水害、コレラの蔓延など、深刻な問題を抱える地区も存在します。構造物の除却・再開発といった先進的な従来の手法を上から目線で実装するのではなく、現地社会に内在する自律的な運営に着目し、伝統的な運営手法を用いた課題解決を通して新たな持続型都市社会モデルを構築するための研究内容について説明しました。また現在の研究調査段階として、どのように社会・空間構造や住環境運営の仕組みの解読が進んでいるのかについて説明したあと、本プロジェクトが持つ意義について話しました。

Virgil HAWKINS准教授「アフリカとの貿易:よりフェアな関係へ」報告

国際公共政策研究科のVirgil HAWKINS准教授からは、アフリカと国際社会の関係について様々な視点から報告を展開し、「アフリカ」に対するイメージを覆す事実を提示していくような報告となりました。例えば被援助国として見られがちなイメージがあることに触れつつ、実際には国際社会からアフリカに流れているお金よりもアフリカから国際社会に流れるお金の方が大きいことをデータに基づいて話しました。さらに、フェアトレードなどの話から理想とする「フェア」と「アンフェア」な現実について触れながら、アフリカの現状について説明しました。ご自身の研究の一つであるメディア論の観点からのアフリカ報道についても触れ、アフリカの実態をより正確に理解していく必要性を感じる報告となりました。

パネルディスカッション

SSI副長でもある人間科学研究科の栗本英世教授をモデレーターとして、講演者と報告者を交えたパネル・ディスカッションが行われました。日本とアフリカの関係性、今後の交流の在り方など大きな議論から、「部族」という言葉を巡る議論まで、様々な事実に基づき、ときにお互いの主張を譲らない白熱した議論が展開されました。参加者のうち、3名の学生から質問が行われ、活発な議論が行われました。

さいごに

第2部として、懇親会は大阪大学会館2階のSSI豊中ラウンジで行われました。アフリカに関わる参加者や学生も多く、第1部に続く熱気を帯びながら自由な交流と対話に花が咲きました。
時に岡村大使が現地で体験した紛争地でのリアルなお話をされたり、栗本教授が文化人類学やアフリカの重要性について熱く語るなど、会場のみなさまが耳を傾け、さながら講演会のようになることも何度もありました。これらの話をもとに、また参加者が自由闊達に議論を広げるなど、非常に熱気あふれる懇親会となりました。