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分断社会の超克

テーマ代表者より

稲場 圭信

大阪大学大学院人間科学研究科 教授

 社会的課題の解決のためには、多様なステークホルダーの協働による包摂的なアプローチが必要です。しかしながら、現実には、民意の分断、世代間の分断、階層の分断など、様々な分断がその協働を阻害しています。
 たとえば、これまでの政治学では、多様な意見の中から一つの社会的決定を導き出すために、対等な立場での熟議を通じた決定が望ましいとされてきました。しかし、一部の国に見られるように、多数派が少数派の権利を脅かすような事件が起きており、多数派と少数派の対立が先鋭化しています。また、米国における大統領選を巡る分断、英国におけるブレグジットを巡る分断等、民主制の国においても民意の分断が激しさを増しています。日本においても、経済的な格差による階層の分断が生じています。
 新型コロナ・ウィルス感染症の影響も加わり、今後、こうした分断は、様々な形で顕在化していくことが予想されます。その中で、様々な分断の構造を捉え直し、乗り越えていくための道筋が探究されなくてはなりません。本テーマでは、つながりあうべき「いのち」という視点に立ち、分断の心理、社会的・文化的・政治的分断、科学と文化の分断等、分断にかかわる様々な社会課題を取り扱い、解決の糸口を探ります。