マンスリー・トピックス

企業と社会が対話をして、環境や社会の課題解決に向けて 一緒に行動していく社会を実現します。企業が自分の行動に責任を持ち、 未来のありたい姿を描き社会に説明をすることが大切です。

Global Compact Network Japan
氏家啓一

2024年11月

 あなたの実感はどちらでしょうか?
 (A)経済活動は歪(ゆがみ)を発生させてしまう。
 (B)経済活動で社会課題を解決できる。

 世界人口は1950年25億人から2010年69億人とおよそ3倍増加し、GDP は約10倍に増加しています。人々は60年間で平均すると3倍豊かになりました。あらゆる社会活動量が1950年以降急速に成長しました。
 一方、アース・オーバーシュート・デイ指標によると、昨年の2023年は、8月2日に、「人間が消費した資源の累積量」が「地球が1年間で再生産できる資源量」を上回ってしまいました(1)。私たちは、経済成長と引き換えに地球に借金生活を続けています。
 1999年のダボス会議で、前々国連事務総長コフィー・アナンが、市場拡大の速度と社会や政治システムの速度がバランスを失っている、グローバル市場を、「人間の顔を持ったもの」にしようと呼びかけて「国連グローバルコンパクト」を設立しました(2)。そして、すべての企業が守るべき共通の国際原則(人権、労働、環境、腐敗防止)を展開します。
 また、コロナパンデミックの最中2020年のダボス会議では、半世紀ぶりの「マニフェスト」改定を行い、大きな方向転換をしました(3)。自分と株主の利益が一番という従来の考え方から、企業は、「従業員、顧客、サプライヤー、地域、社会すべてのステークホルダーに貢献すべき」と改めました。株主への利益還元だけなく「社会価値を生み出す」ことが企業の評価となり、「未来の持続可能な社会に向けて行動する」ことを宣言したのです。
 企業が持続可能(サステナブル)な社会実現に寄与するためには、社会から未来を預けてもらえる「信頼」が必要です。その信頼を得るための行動で、「情報開示と透明性」は益々重要になって来ています。近年、欧州規制やコーポレートガバナンスなどの基準により情報開示義務が求められていますが、外部監査等によることよりも、むしろ自発的で誠実な説明と対話を目的とするべきでしょう。
 2020年に策定された日本政府の「ビジネスと人権に関する行動計画」の施策のひとつに「消費者と協働して社会課題を解決させる経営(消費者志向経営)の推進」があります(4)。環境的に持続可能でない方法で作られた商品を買わないことや、生産に関わる人々が、奴隷的労働や児童労働によって作られた商品を買わないなどの消費者のエシカル購入を推進するものです。この施策はSDGs のターゲット12.8「消費者のエシカル・マインドの醸成(じょうせい)」と、ターゲット8.7「奴隷労働、児童労働の撲滅」をつなぐものです。
 消費者庁の資料によると、「消費者」とは多様なステークホルダー全般を例示しています。「消費者志向経営」とは、「消費者(多様なステークホルダー)と共創・協働して社会価値を向上させる経営」であり、これは、近江商人の共生思想「三方よし」と通底するものと言えます(5)。
 企業が「誰」と組んで、何の「社会課題」を解決するか、そのために何をすべきなのかを考えるフォーマットとなるでしょう。
 以上のことを踏まえ、いのち会議は、先進的な企業リーダーや、サステナビリティ関係団体・市民社会との連帯をさらに発展させて、2030年までのSDGs ゴール達成を推し進め、その先も、なおダイナミックな三方よしによって環境と社会の課題の解決と、平和といのちをまもる社会を実現することを目指します。
 私は、ある授業で学生に質問をしました。経済活動というものは、(A)社会的な歪を発生させてしまうもの、(B)社会課題を解決できるもの、どちらかを選択するという質問です。
 サステナビリティに関する授業だったので、空気を読んだものかも知れませんが、なんと(A)が、6割でした。企業は、(B)の実現を信じ、つねに信頼を得る行動をしていくことが求められます。
 電気電子部品、自動車部品に使用される金属資源のアフリカ鉱山採掘地では、紛争による強制労働、児童労働が報告されています。アパレル業界では、綿花畑や縫製工場における強制労働、また食品分野では、農園における自然破壊や児童労働など、様々なリスクが潜んでいることが知られてきました。
 2013年バングラデシュ・ダッカの商業ビル「ラナプラザ」で、痛ましい崩落事故が起こりました。増産を理由に違法な増築を繰り返し、建屋が崩壊したのでした。廉価な衣料製品をこの工場から手に入れていた大手メーカーが、「私たちは違法な増築を指示していない。私たちには関係ない」と言えるでしょうか。このような社会環境リスクの発生を予防することは、SDGs8.7に関連したダイナミック“三方よし”の狙いです。

参考文献
(1)Earth Overshoot Day – Geneva Environment Network
(2)https://www.un.org/sg/en/content/sg/speeches/1999-02-01/kofi-annans-address-world-economicforum-davos
(3)Davos Manifesto 2020: The Universal Purpose of a Company in the Fourth Industrial Revolution | World Economic Forum (weforum.org)
(4)https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100104121.pdf
(5)https://www.caa.go.jp/consumers/consumer_oriented_management/