Theme 3
新たな人類社会を形成する
価値の創造
テーマ代表者より

出口 康夫
京都大学大学院文学研究科 教授
今から30~50 年後の世界は、人口動態の変化や気候変動、科学技術の更なる進展等により、日々の生活だけでなく、国家像そのものの変容がもたらされ、地球規模での人類社会の価値の見直しと創造が一層進むと思われます。
特に人類史上最も大きな営みとされ、19 世紀以降急速な発展を遂げてきた科学技術が、その加速度的な進展によりもたらすと言われている技術的特異点(Singularity)等による劇的な社会環境の変化に対し、いかにして人類が向き合っていくかが問われています。
また、地質年代区分である完新世に続く新たな区分として提唱されている人新世(Anthropocene)という考え方が示すように、人類の活動と地球環境の関係の均衡をいかに保つかという課題に向き合うためにも、価値の見直しと創造を人類全体で進めなくてはなりません。
これまで価値の創造が、西欧を中心にした国や地域、人々の文化や歴史、思想・倫理等を背景に行われてきたのに対し、地球規模の課題に取り組む過程では、非西欧国の考え方を見直し、積極的に取り入れる必要があります。その意味で、非西洋圏に属する日本の学術知が新たな人類社会の価値の創造にいかなる貢献をなしうるかを問うことも重要です。
本テーマでは、多様な「いのち」が混じりあう共同体の再構築という視点に立ち、人工知能・ロボット、生命科学、Society5.0 やSDGs の再定義、地球・宇宙環境と倫理、西洋と日本等、多様なテーマを取り扱います。