基幹プロジェクト

健康・医療のための行動科学によるシステム構築
Project for development of integrated health-care system based on behavioral science

【 研究代表者 】平井啓 人間科学研究科准教授

高齢化にともなって、日本の医療費は増加を続けている。今後の社会保障費の抑制のためには、効果的な医療政策が求められている。医療費の抑制を考える上で、日本に特有な医療の課題が存在する。国際的には、日本だけで発生した副反応問題を契機とした子宮頸がんワクチンの接種の積極的勧奨の中止、終末期における高頻度な積極的治療(抗癌剤治療など)、臓器移植ドナーの不足、HIV陽性者の受療行動、認知症による医療の意思決定問題などである。

こうした問題が生じている背景には、医療現場においては、医者が患者に情報を提供すれば、患者は合理的に意思決定できるという患者像のもとでインフォームド・コンセントが重視されてきたことがある。実際の患者は、必ずしも合理的な医師決定主体ではなく、医師と患者の間にコミュニケーションの齟齬を生み出したり、患者が必ずしも合理的でない意思決定をしたりすることが多い。患者が合理的な意思決定ができるように医師と患者をサポートするマニュアルやシステムの設計が求められている。

経済学に心理学の知見を取り入れた行動経済学では、現実的な患者像を前提とした意思決定支援・コミュニケーションの在り方が議論され実践されてきた。例えば、デフォールトの選択をあらかじめ決めておいて、その選択以外のものも選べるような仕組みをつくることで、選択の自由を確保しつつ、推奨される選択を選びやすくするというリバタリアン・パターナリズムの考え方がある。また、文化人類学では日本特有の死生観・家族観などの文化の影響が分析されてきた。本プロジェクトでは、こうした経済学、心理学、文化人類学などの行動科学を基盤とし、それらに関わる研究者と、公衆衛生学、精神医学、臨床医学の研究者が議論を重ねる中で、健康と医療に関するより良い意思決定と行動変容のための社会システム構築を提案する。

研究キーワード
行動科学、行動経済学、健康、医療、臨床医学、高齢化
社会課題
治療の意思決定支援、健康に関する行動変容、メンタルネルス、働き方改革